壮絶
「ほら、手を貸してやろう」
「・・・・・いらない」
束ねていたゴムは先ほどのダイの空裂斬のせいで流されてしまい、髪が身体中に張り付いている。
この暑さにこの張り付きは拷問だ。
眉を寄せるの表情に苦笑をしながら、手を無理やり掴み引っ張り立たせる。
マァムとお揃いで買ったという、真っ白な無地のビキニ姿がそそられるが、ここは耐えるべき場所。
さすがにこの炎天下でメラゾーマを喰らいたくはないし、そこまで学習能力がない阿呆ではない。
この時点で、過去に襲い掛かりメラゾーマ+ベキラゴンのコンボを喰らったことを、誰ともなしに暴露していることに気づいてはいないのがヒュンケルだ。
これぞ脳内戦闘馬鹿。
「師匠もいい感じに妖怪になって・・・・・肝試し、あの姿で出てきたらさぞ楽しいでしょうね」
「ポップがいい反応をするだろうな」
いまだにアバンのお仕置きを食らっている4人を傍観しながら、安全圏へと逃げるのは大人な考え。
安易に危険無法地帯に飛び込まない姿は、彼らよりもアバンのことを理解しているということだろうか?
いや違う。関わりたくないだけだ。
「メルル、おいで」
おろおろと、危険地帯の傍で立ちすくんでいるメルルに声をかける。
どうしようか迷っているのはわかるが、きてもらわないとメルルまで危ない。今にもアバンが襲いかかりそうだ。
みかね、ヒュンケルがメルルを迅速に救出に向かい―アバンの魔の手が伸びてきたが、その腕を掴みボケッと突っ立っていたノヴァの肩を掴ませる―戻ってきた。
「危ないからここにいようね」
よしよしと頭を撫でて宥める。あがるノヴァの悲鳴はスルーということで。ただいま両耳慰安旅行中です。
「あの・・いいんですか?」
「あれも修行の一環だ」
え、なんの?
メルルに悟られない程度の視線をヒュンケルに投げる。
向けられた視線にたいし、わざとらしく目を逸らされた。その先で、チゥがノヴァとともに鮮やかに青空を舞う。
その中央では、ポップの半身が砂に埋まっており、哀れみを込めた目で二人して見つめているのをダイが必死の形相で振り返る。
助けてくれ・・・!!
世界を救った英雄が助けを求めてくるなど貴重な体験である。いよいよ本格的に危険度が増したのだろう。だが助けない。助けられない。
そ知らぬ顔で海の中にメルルの腕をひっぱり入っていくに続き、ヒュンケルもまた弟弟子に背を向け、海の中に逃げ込んだ。
鬼ィィイイイーーーーーーーーーーーーーーっ!!!
ダイの叫びも海の中にもぐり聞こえないことにした。
女王の特権を使い、別荘から離れた森の奥からは禍々しい鳴き声が止めどなく聞こえてくる。
怨念が篭った鳴き声に、本物が出てきても可笑しくない。
そう漏らしたヒュンケルの呟きをきき、若干2名が逃げ出そうとしていたのをマァムとレオナが捕獲した。
「ほら、ちゃんと腕につけて」
が配っているなんてことない、鉄製の腕輪。
なぜこんなもの身に付けなければならないのかまだ理由を説明されていないが、昼間のアバンとの死闘で体力が大幅に削り取られている面々―特にダイとポップとチゥとノヴァ―は、無言でつけた。
ぐるっと見回し、皆が装着したのを確認してから晴れ晴れとした笑顔で言い放つ。
「その腕、呪われてるから」
問題発言。
「ていうのは嘘で、その腕輪は魔力を0に、力を一般人並にする道具だから」
反論をされる前に訂正し言い直す。
肝試しをするお化け役は、レオナが「一番怖いお化け役をした人にはボーナス奮発するわよ」と声をかけ募った勇気あるパプニカの兵士達だ。
その兵士達に反射的に反撃しようもんなら死ぬ。間違いなく死ぬ。
なのでがわざわざマトリフのところに行き、手ごろな道具を探してきたのだ。
「で、反射とは云え呪文を唱えたり反撃にでた人はもれなく呪われる」
「結局呪われてんじゃねーかよコレ!!!」
見事なツッコミをしてきたポップに笑いかける。
こんな丁度いい条件そろった道具が呪われていないわけがない。
そういわれたら何も言い返せはしない。力なくうなだれたポップの肩を、いたわりを持ってダイは叩いてやった。
一番手。あの禍々しい鳴き声がする森の中に入っていったのはチゥとマァム。
あの見栄っ張りのチゥをどうにかできるのはマァムしかいないというのが理由だ。勿論、ちゃんとくじ引きは行っている。
二番手。チゥの悲鳴が聞こえる中、丁度頃合いだろうとダイとメルルが向かった。
ダイの竜の紋章もまた、腕輪の効力によって封印されているだろうが心配だ。
三番手。何故か木が倒れるような音が響くのを合図にポップとヒュンケルが向かった。
そういえばこの呪いの腕輪はどうやって外すのか考えてなかった事を思いだしながら見送ってみた。
「・・・・・・・行きましょうか」
「・・・・・・・そうですね」
ポップの悲鳴のような、怒鳴り声のような声が響くのを合図にとアバンは歩き出した。
ちょっと間があったのは、二人して腕輪の外し方のことを思いつめてしまったからだ。きっと、最終的には呪われれば外れるだろうという結果に落ち着いてみた。
もう、一体何があったんだろうと木が倒れていたり、泣き付いてくる兵士とかに軽い現実逃避をおこしながら、奥へと歩く。
さすが終盤手。何がなんだかさっぱりだぞ。
お化けが配置されている場所にお化けはおらず、何も出てこない。ただの散歩をしているだけ。
一体前のペア達は何をしたというのだろう。いや、聞きたいと思わないが。
「・・・・どこまで大人げないのよ・・」
「まあまあ、皆楽しんでるということですよ」
「楽しんでるでまとめていいレベルじゃないですけどね」
ちゃんと腕輪つけさせたよな?
変に不安になってきたの肩をそっと掴み、停止させる。立ち止まったことにアバンをみると、静かにと唇に指を添えていた。
前を見れば、先に中に入っていた面々の背中。
その奥には人魂と、ハドラー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハドラー?!
「・・・・・・・・・は?」
『出やがったぁぁぁああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』
の間の抜けた声が合図だったのか、ポップとチゥが叫び面々がアバンとの合間をすり抜け走っていく。
何故かダイも走っていた。
おいお前、確かハドラーと因縁の戦い繰り広げてたよな?
メルルの腕を掴んで走っていくレオナやマァムにも何か言いたくなったが、額を押さえてなんとか抑制してみた。
もうすこし落ち着けばいいものを。まあこの暗闇では早とちりしてもおかしくはないのだが。
溜息を吐き出し、微動だにせず立っているヒュンケルの傍へと近寄り、その人魂とハドラーに声をかけた。すっごい疲れた声で。
「性質が悪いよ、二人とも」
ヌッと、闇の中に人魂とハドラーは消えた。
そして、出てきたのはラーハルトとヒムだった。ヒムは申し訳なさそうにしており、ラーハルトは二人の背後、ダイ達が走っていった方向をみていた。
「すみません、様」
「まさか・・ダイ様に気づいてもらえないとは」
「気配けしてちゃ気づかないわよ。今この腕輪のせいで一般人レベルになってるんだから」
呪いの腕輪をみせ、後ろでアバンも頷く。
どうやらこの呪いの腕輪の能力は相当のもので、普段でははっきりと分かる人の気配も感じられないことに動揺し、かなりパニくったようだ。
なのになんで木が倒れたのかが謎だ。
「・・・・?おい、ヒュンケル・・・?」
ペチペチと頬を叩くヒムにどうしたのだとラーハルトも近寄った。
顔を見つめ、呆れた顔になるラーハルトにどうしたのかとも顔をみた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おやおや、まだまだ修行不足ですね」
そうじゃないだろ。
妙に静かだと思えば、まっすぐ前を見たまま固まっているだけのようだった。
「どうするんだ?運ぶとなるとかなりの重労働だぞ?」
「どうするって・・・」
アバンを見て、アバンもを見て、頷く。
「このまま放置しておくわよ」
「このまま放置しておきましょう」
ヒムとラーハルト二人ではどうすることもできず、言葉とおりにヒュンケルはとアバンによってそのまま放置された。
翌日、森から帰還してきたヒュンケルの身体はあちこち虫に刺され、赤くなっている。
それを腹をかかえ大爆笑をするの横で、ヒムは哀れんだ目で見つめていた。無論、ダイの傍にいたラーハルトもだ。
「ハドラーを見たあとから記憶がないんだ・・・・・」
ポツリと、に痒み止めの薬を塗ってもらいながら吐き出された台詞に、また盛大に爆笑をする。今度はアバンも若干笑っている。
よく無事だったな!
ポップの心配する声に耳が痛いと、ヒムとラーハルトは窓の外に広がる大空へと視線を投げた。
fin.
勢いのまま描きなぐったマンガなのに、有り難いことに雛祇さんから素敵すぎる続きを頂いてしまいました!うっほーー!!
夏に相応しい楽しくてドタバタっぷりが、読んでてニヤケ顔を隠せませんでしたよ!
楽しいはずなのに、幸せすぎて涙腺までグッと来ました(笑)果報モンや、ワイ・・・!(。´Д⊂)
ちなみにポップとダイとチゥとノヴァは4連カールにされているらしいです(笑)なんという嫌がらせをするんスか、先生wトラウマレベルですよ!
雛祇さん、本当にありがとうございました!!
まさに夢のような夏のひと時・・・もうずっと夏でいい!