炉の火を落とし、今日も一日終わった。
寝台に身体を預け、ノヴァはやがて来る睡魔に身を委ねようとしていた。
師匠のロン・ベルクといえば、早々に自分の寝床に収まっている。弟子であるノヴァは一日の片付けなどに追われ、ロン・ベルクが休んでだいぶ経ってから、こうしてようやく休息を得る事が出来る。
だが、辛い事などない。
自分で求めてる道の途中なのだ。ノヴァにとってはその疲れさえも心地良いものであった。
コツコツ。
窓を何かが叩く音。
風で起きた音ではないように感じたノヴァは部屋の小さな窓をそろりと覗く。
「!?」
こんな時間、こんな場所ににいるはずのない恋人が開けられた窓から顔を覗かせる。そしてあっという間にその小さな窓から身体を滑り込ませてノヴァの部屋への侵入を果たした。
いつもならば休日を利用して週に一度、遊びに来るだったが、今までこんな風に忍んで来る事などなかった。ノヴァはただ驚愕に口を開けるばかりだった。普段使わない窓を通ったためか、軽くほこりを払うの後姿に声掛ける。
「ど、どうしたんだよ、」
すると振り向きざま、ノヴァに飛び掛るように首に手を回し、唇を塞いだ。
「んんッ!?」
どこか縋るような口付けを何度も落とし、きつくノヴァの身体を抱き締める。常ならなぬものを感じ驚きはしたが、他の誰でもない愛しい恋人であることには違いないので、いくらかの逡巡のあと、ノヴァはその身体を抱き締めようと腕を伸ばした。
が、は乱暴に身体を離すとノヴァをベッドへ軽く突き飛ばした。そしてぽかんと見上げるノヴァをよそに、着ていた服を躊躇なく脱ぎはじめた。
「ちょ、ちょっと、!?」
戸惑うノヴァは倒されたベッドから動くことも出来ず、ただ小さな声で名を問い掛けるしか出来なかった。
だがはそんな声にも耳を貸さないといった様子で、瞬く間にボタンシャツの前を肌蹴た。夜の闇の中でも光るほどの白い裸体が目に眩しい。ノヴァはそのまろやかなふくらみに目が釘付けになった。
そんなノヴァの視線にも気にせず、動作の速度を緩める事なく、はいていたスカートと下着も取り払う。艶やかな光を纏う柔毛を前に、ノヴァは最早、喉を上下させる以外出来なかった。
ノヴァに一歩二歩と見る間に近づくと、ノヴァのズボンに手を掛けた。混乱するノヴァでも何をしようとしているのか分かった。出来るだけ小さな、でも出来るだけ強い口調でを諌める。
「だ、ダメだよ!」
そんな声も聞き入れず、黙々と器用に脱がしていく。
「ほ、本当にヤバイって!今日は先生もいるんだよ!?」
ロンは炉のある中央の部屋にある簡素な寝台で休む。物置を改造したこのノヴァの部屋とは扉があるにしても、粗雑な小屋の壁など無いに等しい。こんな所で愛し合おうものなら丸聞こえもいいところだ。
忍び込んで来てからまだ一言も発してないは、ようやくその口を開く。
「大丈夫。声、我慢するから」
「そ、そういうことじゃな」
続きはの唇に塞がれ、発せられなかった。
ようやく声が聞けて、『ああ本人だった』とどこか安心したノヴァは、観念したようにの口付けを受けながら寝床に背中を預けた。
は驚くほど器用にノヴァの寝巻きを脱がすと、見る間に下半身を露わにしていった。いつの間にか痛いほど張り詰めたノヴァ自身は、はち切れんばかりに怒張する。こんな状態の自身を露わにされ、多少の気恥ずかしさが残る。
若いノヴァのソレは、寝転んであお向けば、自然と腹の方へ背伸びする。
はそのノヴァの腰に下着も取り払った露わな状態でまたがると、自身の秘裂で挟むように擦り付けた。
「……んッ……!」
熱く柔らかな粘膜の感触に、ノヴァの呻きと共にぴくんとソレは震えた。
顔を起こせば自分の腰にまたがる半裸のがいる。しかも見え隠れする秘裂からこぼれる蜜は、自分のモノが今まさに感じ取っている。それに二、三度震えた。
はといえばノヴァ自身の硬さと、今のほんの少しの震えにも敏感に反応していた。見下ろすノヴァの視線の先は完全に秘所の方を向いていた。見入るように外される事のない視線に、それだけで熱が沸き起こる。
自分はなんていやらしい事をしてるんだろう。
そうは思ってもあがる息を抑えられない。沸々と沸き起こる得も言われぬ欲に呑まれようとしていた。
はおずおずと腰を前後に動かしはじめた。クレバスに沿って滑らせる。 たったそれだけで蜜は溢れ、その動きをスムーズにした。数回往復すれば、張りつめたノヴァ自身に滴るほど溢れる。緩慢で、でも艶かしいその動きは、慣れない体勢と動きによるものだと分かってはいるのに、確信犯ではないかと問い詰めたいぐらい凶悪で、これ以上なくノヴァを昂ぶらせていった。
「……ん……っく……」
徐々に硬度を増していくのを最も敏感な部分で感じ取る。
眉をひそめ、薄く唇を開くノヴァの表情を見下ろすだけで、ずくりと秘所が脈打つのが分かる。
は腰の動きを止めると少し浮かせた。そしてノヴァの怒張に手を当て、丸みのある先端を自らの入り口に導いた。
これにはノヴァも制止する。
「ちょ……! そんな急に、ムリだよ!」
はその制止も聞かず、キュッと口を結んでゆっくりと腰を下ろす。真剣な面持ちで行為に取り組むを、ノヴァは振り払ってまで止める事は出来なかった。止めたら本気で怒られそうな気もしたし、何より、かつて見た事のない淫らなの姿を眺めていたいというのが本音だった。
だが、慣れない行為に上手く腰を落とし進めずにいた。何度腰を落としても、栓がされたように進まない。
どうして
早く欲しいのに
十分濡れてるはずなのに
痛みぐらい我慢できるのに
どうして入っていかないの
焦る気持ちは眉間に皺を寄せる。
飢餓感にも似た焦りは上手く手に入らない悔しさと情けなさで、目頭を熱くさせた。
そんなを感じ取ったのか、ノヴァは自分の腰にまたがるの白い腰に手をかける。
はハッとする。
「ノヴァ……」
下で優しく微笑むノヴァに目が醒めた思いがした。
仕方ないな。慈しむような瞳はそう言っているように見えた。そんな瞳をに投げかけ、滑らすように腰のくびれを撫でたあと、ノヴァは腰を上下に小刻みに動かした。
「んッ……んぅ……!」
挿入とまでいかないが入り口のあたりで何度も上下させていると、はいつもの行為を思いだし、そのリズムに身体を委ねたくなった。強張っていた身体は徐々に熱が上昇し、蜜が溢れ始めた。それを潤滑油にして先端がぬるりと潜入できた。
「んあッ! ……っくぅ……!」
先程よりかはいくらか揺れ幅を大きくして上下すると、するするとあっという間に根元まで飲み込んでしまった。その充足感に浅く小さな息を一つ吐き出し、は自らの下腹部に目をやる。
「……はいっ……ちゃっ……た……」
ポツリと漏れた感想にノヴァはクスリと笑う。
「動いてごらんよ」
「……え……?」
「僕を襲いに来たんじゃないの?」
挑戦的な瞳にはつい負けん気を起こしてしまう。
ここで腰を引けば自分が何も知らない子供を露呈するかのようで面白くなかったらしい。は膝に力を入れて自分の身体を上下に揺すりはじめた。
だがこれも慣れない動きの為、どこかぎこちなくなってしまう。自分の身体を揺すって人の身体にぶつけるというのは、思いの外、重労働だった。いつもこんなに大変なことを何時間もしていたノヴァを思うと、つい感嘆の眼差しを送りそうになる。
この身体のどこにこんな体力が隠れてるんだ、自分よりお前の方が大魔王バーンと戦った方がよかったんじゃないかと眉をひくつかせるほど、たまのお泊りの翌日の朝には全身を襲う倦怠感と腰の周りに纏わり付く鈍痛と共にを思い知らせる。なのに呻くを余所にノヴァはいやにさっぱりと血色のいい表情で破顔している。それを見ると文句の一つも言えなくなるのだが。
「何か他の事考えてるでしょ」
心を見透かされたようでドキリとする。
「し、してない」
自分はなんて演技が下手なんだと思い知る。自分でわかるぐらいだ、ノヴァには肯定以外に取れるはずがなかった。
「ふーん」
ノヴァはやおらの腰を掴むと、自分の腰を突き上げた。
「っひッ!」
叫びそうになったのをそこまでに抑えられたのを褒めてほしいぐらいだった。は慌てて肩に残っていたシャツの裾を口に運んだ。
「考え事してる余裕なんてなくしてあげる」
冷笑と言える笑みを浮かべ、間髪入れず突き上げる。
「……っひ! ……んん! ……ッく、う……!」
は白い喉を晒して仰け反る。
乱暴なほど与えられる振動は、急激にを追い詰める。身体全体が後ろに仰け反ってしまいそうなほどの快感と、飛び出しそうになる嬌声を必死に押し止める。この薄壁一枚向こうには、ロン・ベルクがいる。物音一つ立てればヤツの事だ、耳聡く聞きつけるに違いない。は我ながらなんて無謀な事をしたものだと激しく後悔していた。
「……やっぱり……ダメッ……! ロンに、聞こえちゃう……!」
「いいよ。先生には明日謝っておくから思う存分声上げていいよ」
そういう事を言ってるんじゃない。はそう思った。そんな声を聞かれた日にはどんな顔して今度から会えと言うんだ。ぎりぎりとシャツを噛み締める音が唯一冷静さを保たせる。
だがそんな抵抗の気持ちも一突きごとに霞んでいく。
「っふ……ぅ、ん……! ん!……んん!」
「すごい……」
目の前でほんのり色づく白い身体が、自分の腰の上で淫らに跳ねる。ふるふると震える乳房の先にある薄紅色の屹立した蕾が、ノヴァの劣情を誘う。全身で感じてるのに眉をひそめ、必死に快感に耐える姿はこれ以上なくエロティックだった。
ノヴァは容赦なく突き動かす。
は穿たれる熱に翻弄されながらも、自分の下にいるノヴァに魅入っていた。
切なげに息を荒げるノヴァを見ていると、段々と感じた事のない熱が沸き起こってくるのを感じる。
彼を征服してるみたい……
もっと快感によがる顔が見てみたい。
もっと攻めたててみたい。
良からぬものだと分かっているのに振り払えない甘みがあった。
は突き入れるリズムに合わせて、先ほどと同じく膝に力を入れて腰を上下させる。自身の身体の重みも加わって感じる圧迫感が増し、さらに強い快感がお互いの身体を占拠する。
快感を得るために自らの腰を淫らに動かす。
まるで美しい獣になったかのようなに、ノヴァはごくりと喉を上下させた。
掬い上げるように乳房を両の手で包むと、しっとりと吸い付くような感触を楽しめる。そしての律動に合わせてその先の、薄紅色の突起を弾くとさらに一層、の蕩けんばかりの秘所はノヴァ自身を締め上げた。
その秘所に目をやれば、怪しい光を纏って飲み込む様がよく見える。なんとも淫靡な光景に、甘い痺れが全身を駆け抜ける。はびくりと脈打ったのをナカで感じる。それに震えがくるほどの歓喜を覚えた。正常な思考など蕩けるように崩れていく。ただ貪るようにノヴァの身体をかき抱いた。
「……んぅ! んん! ……っふ、う……!」
溢れる快感を嬌声を上げる事でやり過ごせる普段と違い、声を上げられない今の現状では行き先の無い苛烈な快感に身体が弾けそうだった。
でもまだ足りない。
奥底の渇望する欲が腹の中を蠢き、を支配する。
視界が狭まる様な感覚にとうとうは上半身を起こしてはいられなかった。ノヴァの首筋に顔を埋め、肩に爪立てる。そしてそんなに追い討ちをかけるように強く腰を掴んで、さらに突き上げた。
「んん! んッ! ッく! んぅ!」
そばにある耳朶をぞろりと舐めると、電流が走るほどノヴァ自身を締め上げる。
「ひぅ……ッ!」
ぶるぶると小刻みに震える身体に絶頂が近いことを知る。はノヴァの耳元に唇を寄せ、熱い吐息を吹きかける。
「も……っと! ……もっと、強く……っ!」
その声に達しそうなほどの痺れを感じる。
ちぇっ、ズルイや、そんな声でおねだりなんて。
脳裏に浮かぶその言葉とは裏腹に、ノヴァは口角を上げた。そして壊れそうなほど腰を叩き付ける。
「こう? 気持ちいい?」
「うんッ……! イイ……ッ! す、ごい……の……!!」
耳を掠める荒い息遣いは浅く速いものに変わる。最奥に向かってノヴァは深く何度か突き入れると、は耳元で小さく小さく、啼いた。
「で?」
「えー……と、……その、何て言うか……」
決して厳しくはないが、問い質す目をに向けるノヴァ。は口をもごもごとさせ、目は泳ぎっぱなしだ。
「うん?」
言い逃れはさせてもらえない瞳に観念したかのように一つ深い息を吐いた。
「あの……夢見が悪かった、というか……」
「夢? どんな夢さ?」
「……聞いても笑わない?」
「笑わないよ」
即答してくれるノヴァにいくらか安堵し、は口を開いた。
「……ノヴァが他の女の子とどこか行っちゃう夢」
「……へ?」
「だから……!そんな夢見ちゃって怖くて不安になって……。気が付いたらここに来てた……。ゴメン!ただの焼きもち!醜い嫉妬!お約束な展開!」
小さく喚き立てる。
「なぁんだ。それなら最初に言ってくれればよかったのに。そうしたらこうして……」
の身体を強く抱き締め、耳元で囁く。
「僕が好きなのはだけ」
全身の血液が沸騰したように体温が上昇する。
淡い余韻の残る素肌に触れることで、気持ちがダイレクトに伝わってくる。きゅうっと胸の奥が締め付けられた。顔を離すと、はにかむ様な笑顔を見せてくれる。
「って、誤解を解けたのに」
「ごめん……」
自分の取り乱した様を思い出すと、顔から火が吹き出そうだ。
「ま、僕にはいい夜になったけどね。かわいいも見れたことだし」
畳み掛けるように赤面させてしまうと、は逃げるようにノヴァの腕から飛び出した。
「私、帰るね!」
「え、もう??」
「ロンに見つからないうちに帰る! それじゃあね!」
素早く着衣を済ますと、よくこんな小さな窓から出れるもんだと感心するほど巧みに身体を通し、は帰っていった。
嵐みたい。
残されたノヴァはポツリと思った。
翌日。
はやはりちゃんとノヴァに逢いたい、そう思って口実のための弁当を片手にロン・ベルクの小屋に向かっていた。
「こーんにち……は?」
ドアを開けて飛び込んできた光景を目にすると、小鼻の横がひくついた。
地べたに正座し頭をうな垂れるノヴァの前で、踏ん反り返って椅子に座るロン・ベルクの足は、ノヴァの頭から背中に向けて乗せられていた。
「えーー……と、…………お楽しみ中?」
「違うわこのアホ女! 貴様もここに直れ!」
見ればロン・ベルクの瞳は烈火のごとく燃えさかっていた。
は気迫に押されてすごすごと、ノヴァの隣に膝を折って座り込む。
すると隣のノヴァと同じく振り落とされるように足を乗せられる。
「ぐほッ!」
脳天に響く痛みを受けながら、こっそりノヴァに話しかける。
「な、何のプレイなのコレ」
「……昨日のがバレてた」
「…………マジ?」
「マジ」
「ど、どうして!? 私」
声ガマン出来てたよね!? という台詞は目で語った。
「……ベッドの軋みまでガマン出来なかったということで……」
「そんなぁ!」
「痴話喧嘩は俺のいないところでやれ。目障りだ」
一層足の重みを加え、二人は地面すれすれまで頭を垂れる。
「「ぐえぇぇ! ご、ごめんなさい〜!」」
出るのは蛙が潰れたような声しかなかった。
ちらりとロン・ベルクの顔を窺うと、深く紅い瞳の色は怒り――それもあるだろうが――からというよりも、おそらく寝不足によるもの……。
そしてそのまま六時間、二人は性の良きあり方について説教を受けたのだった。