black impact



 ある晴れた昼下がり。
 太陽と海と風の祝福を受けたここパプニカ王国では、その素晴らしい景観とは似つかわしくない黒い陰謀が人知れず息づいていた。





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 主君となったレオナに呼び出されるのは相談役の自分には日常茶飯事だった。
 だが呼ばれたのが執務室ではなくレオナの私室であるところには違和感を覚える。それは公的な用事ではなく私的な用事。その容易に出来る予想から頭の中には警告音がけたたましく響き渡る。
「姫、お呼びですか?」
 振り返るレオナは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせる。
「うっふふふ〜呼んだわよ〜! って何よ、そのいや〜な顔は!」
「だってこんな風に呼び出されて、碌な事があった試しがないもの」

  明日の会議を抜け出してどこに遊びに行こうかと抜け出す事を前提で話されたり、どこからくすねて来たか知らないが高級ワインを高々と煽るレオナの横で三賢者が既に床に這いつくばっている昼間からの宴会に否応無く引きずり込まれたり、地底魔城の噴火で活性化した温泉をもっと掘り起こして観光を盛り上げようと思い立ったその日に突貫工事をさせられたり……。思い出す苦い経験の数だけ眉間にシワを寄せる。

「失礼ねぇ」
 レオナは白い頬をふっくらと膨らませる。
「それに付け加えてその白々しい態度! こういう時は何かしら企んでるんだって教えてくれた時のバダックさんは咳込んでたし、アポロさんなんて老け込んでたわ!」
「……ふーんそーう」
 どこからか取り出したエンマ帳にマイナスの棒が引かれていく。嗚呼、今度のボーナスは期待しないでね、とは心の中で謝罪した。
 エンマ帳を机の引き出しに厳重にしまうと、レオナは華やかな笑顔を見せた。
「そんな事よりもね、今日は貴女にプレゼントがあるの!」
「プレゼントぉ〜?」
「何よ、その顔は! ふふん、でもいいわ。コレを見たら貴女もその態度を改めざるを得ないでしょうよ!」
そう言ってレオナは自分のタンスの引き出しを開けると、目当ての物をの前に高々と広げて見せた。
「じゃーん!!」
「こ、コレは……幻の……!!」

「そう…………!

エッチな下着よ!!」

「こ、声が大きいよ!!」
 二人は慌てて両手で口を押さえる。
 そして固めた身体をそろそろと動かし部屋の外の様子を伺う。だが幸いにも廊下には誰も通らなかったようだった。
「ど、どうしたのよ、コレ……!」
 口元に手を当ててボソボソと囁きあう。
「こっそり作ってもらったのよ! 見てよ、このデザイン、光沢、肌触り! 職人の技が光ってるでしょ!? 二ヶ月待ちよ!? 待ち遠しかったんだから〜!!」
「す、凄いね、確かに……」
 先程の態度を一変させて、は食い入るように下着を見つめる。
 黒く光るシルク地は極端に少なく、触れると壊れてしまいそうなほど繊細な作りと初見の畏怖から、思わず指だけで摘み上げる。肌触りのいいストッキングは触れると手に滑るような滑らかさだ。
「どーお? 気に入った?」
「う、うん……。正直ちょっと気になる……」
「そうでしょうよ。コレを前に頑なでいられる訳無いのよ! あ、ちなみに私のはこっち」
「赤ッ!!」
「コレぞ正に世界に二つとない唯一品、エッチな下着+1よ!」
「不思議なダンジョンじゃないんだから……」
 だがエッチな下着赤いバージョンは、さらにその妖艶さを際立たせていた。見る者をたちどころに赤面させる威力があり、防具の王者と呼ばれるに相応しい威厳するらある。さる王国の国宝だったというのにも頷ける。しかも赤い。全部赤い。
「私はコレを着けてダイ君に試すから、はヒュンケルね!」

「………………は?」

「だからぁ。どんな反応を示すか教え合いっこするの! うふふ、楽しみ〜!」
「えええええーーーっっ!!?」
「一人だけで着たって意味ないでしょ! コレは見せる為のモノなの! ああ、どんな顔するかしらねぇ、楽しみねぇ〜!」

 あんぐりと口を開けたを余所に、レオナは頬を薔薇色に染めて今宵の妄想に漬かりはじめた。






 遠慮がちに扉を叩く聞き慣れた音が、の部屋に響いた。
 は深呼吸を三つすると、扉のノブに手をかける。
「いらっしゃい……」
「ああ……」
 いつものように迎え入れられただろうか。は緊張から所在無さげに空を舞う手を、握り潰すように胸の前で留めた。

 押し切られる形だったが、結局貰ってきてしまった。そのまま突っ返すことも出来たはずなのに、は出来なかった。すらも、ただの布地から発せられるとは思えないその魔力に魅入られてしまったということか。

 そんなの様子に気付く事なく、ヒュンケルは窓際の腰掛けに向かうを後ろから抱きしめた。
「ヒ、ヒュンケル!?」
 いきなり感じた恋人の温もりに、いくら慣れたとは言え心臓が跳ねてしまう。振り向くとすぐ側に銀髪から覗く綺麗な鼻筋が見える。
……」
 吐息に混じった熱い呼び掛けがの胸を打つ。
 ヒュンケルはを振り向かせると性急に口付けを落とした。
 薄い唇から差し出された舌がの小さな舌を絡め取り、言葉少ない普段とは掛け離れた熱っぽさで攻め立てる。
「……ッふ……んぅ……」
 唇を離せばすっかり息は上がっていた。

 ベッドに腰掛けさせられたところで、 は今日の真の目的を辛うじて思い出す事が出来た。また一つキスを交わそうと顔を近づけたヒュンケルを制する。
「あ、あの……さぁ! 実はヒュンケルに、そ、その………………そう! プレゼントがあるんだけど、受け取ってくれる?」
「プレゼント……?」
「ちょっと用意するからコッチ見ないでね! ハイ!」
 急な展開に置いていかれながら、ヒュンケルは背中を押されベッドに放り込まれた。突っ込んだベッドから顔を上げて、背中越しに衣擦れの音を拾う。素直に従ってベッドの上で待ちぼうけを食らいつつも疑問符は目の前を浮かんでいる。
「プレゼントの用意、出来たよ……」
 幾ばくか震えている声に更なる疑問を抱きつつ、ヒュンケルは言われるままの方を振り向いた。

 そこには艶かしくも美しい下着姿のが立っていた。

 息を呑む乾いた音が脳裏に過ぎる。
 下着の黒色は透けるような白い肌を更に際立たせ、身体の肉感的な部分を申し訳程度に覆い隠す。蝋燭の揺らめく灯りが肌と肌の重なり合った部分に影を落とし、その最も暗い部分は黒い下着に消えていった。
 その最奥を暴きたい、男に当然湧き起こる欲望がヒュンケルにも渦巻いていた。目を見開き、気持ち身を乗り出してしまっている事にも気付かないほどに。
 大胆な装いとは真逆の恥じらう表情も、腹の前で合わせる手の震えも、いつものが内包するはにかみ屋の性分を見せているが、目の前にいるのは色気を纏った正に別人のようなだった。
「へ、ヘンかな、やっぱり……」
「そんな事はない。凄く……綺麗だ……」
 ヒュンケルはベッドの縁に腰掛けると小さく両手を広げ、を招いた。は誘われるようにその腕の中に入っていく。愛しげに見上げてくるヒュンケルに下腹部がきゅう、となる。
 壊れ物に触れるような慎重な手つきで肩にかかるの髪を梳き、腕に触れ、身体の前で堅く合わせていた手を解いた。

 見られている。

 は消え入りたいほど恥ずかしくなったが、両手は掴まれて隠す事も逃げる事も出来ずに視線はどんどん下を向いてしまう。
「こんなに胸を躍らせるプレゼントは初めてだ……」
「……本当に? 喜んでもらえた?」
 ようやく微笑を見せた
「いいのか? 貰っても……」
「うん……いいよ。頑張ってラッピングしたんだもん」
「そうか、ラッピングか……」
 そう呟くとヒュンケルはの後頭部に手を寄せ、自分の方へ引き寄せた。そして熱く口付けを交わすとそのまま抱き締め、身体を反転させてベッドに沈み込んだ。

 キスの雨を降らせると、ヒュンケルの耳に微かに上がる息が届く。
「……プレゼントっていうのは、ラッピングを解くのが勿体無い気がしないか?」
「……え?」
 とろんと重くなる瞼を懸命に上げると、自分を見下ろす整った顔立ちとぶつかる。の好きな切れ長の目は、情欲の色を含んでいた。
「俺はそう思う。だからこのまま頂く事にしよう」
「え。………………えぇッ!?」
 このままってどのまま? というの疑問に答えるように、首筋に唇を寄せて身体を重ねはじめた。

 は唇が首筋から胸へ降りていく様が大好きだった。
 銀色の髪がさらさらと頬や首に触れるのが気持ち良くて、すぐ目の前で身体を愛してくれる様子が見て取れるのが恥ずかしいながらも目が離せないからだ。ついいつもの様に愛しさから髪に指を絡ませてしまう。
 いつものはじまり。
 それに気を許してしまったは意識を閨事に集中する。が、いつもと違う事を次の瞬間、ようやく思い出す。ヒュンケルはブラジャーを外す事なく、カップを下にずらしてのふくよかな乳房を外気に晒した。そして薄紅色の蕾を目で堪能する暇もなく、貧るように口に含んだのだ。
「ッあ!」
 下着の魔力に煽られた男の欲は、実際限界に等しかった。直ぐにでも中に入りたいほど欲望は引き上げられている。
 それは蕾を味わう口内の熱さからにも直ぐ分かった。その熱はの身体の奥底の温度も急激に高めていった。普段は感じない衣服の感触を残したまま快感を得ている事もその加速度を上げていく。
「あっ……! ん……んぅ……!」
 は顎を高く掲げ喉を晒し、舌で弾く度に身体は痙攣を起こすように跳ねていた。
 目と同じ様に指先でもの身体を楽しむ。身体中に掌と指を這わせるとヒュンケルは愛しげに微笑んだ。
 その指をするすると下腹部にまで降ろすとそのまま下着の中に滑り込ませ、あっという間に蜜を絡ませる。
「あン……ッ!」
 硬い指が尖りを掠めた刺激に思わずヒュンケルの肩に爪立てる。下着の中で忙しく動く指の愛撫に、肩にあった手を首に回し縋るようにしがみついた。
 己の口元にある耳にヒュンケルは低く囁く。
「いつもより溢れてるな……」
「ッあ! ……ゃ、だあ・・!」
「汚してしまうから、これだけ脱がすぞ」
 そう言ってショーツだけを素早く下ろした。
 後に残ったのはガターベルトとストッキング、そして露わになった秘部だった。
 時間が一瞬止まった気がした。
 切り取ったように停止した目の前のヒュンケルをボンヤリと見つめ、背中のベッドの感触だけがやけに脳へ伝わってくる。は脱力した身体をそのままに、ちっとも進まない秒針をもどかしくも見守る、おかしな時間の感覚にとらわれた。
 手を伸ばそうか。そう思って指がほんの僅か動いた瞬間、止まっていた時は急激に動きはじめた。
 覆い被さるように体を重ねると、下着を取り払われた秘部へ再び指を運ぶ。そして熱くとろける蜜をたっぷり指先にまぶし、既に硬くなっている花芯に擦り付けて震わせた。
「あっ! あぁッ! やあ……ッ!」
 甘みを含んだ叫びがヒュンケルの耳をくすぐる。その声が耳に届くだけで耳を愛撫されているようで、抑え切れない衝動が背筋を駆け巡った。
 触っているだけなのにいつもより息を荒げてしまうのは、この下着のせいだろう。製作者の思惑に乗せられてしまっているようで正直、面白くない。だがこれだけ苛烈な昂ぶりを露見させたのは間違いなくこのアイテムであり、なのだ。恐ろしさすら感じる脅威の威力に震えが起きる。打ち付ける心臓の早鐘が早く中に浸りたいと叫んでいるようだ。
 ヒュンケルは既に暴発間際の分身を取り出し、今までにない性急さでの秘所を穿った。
「ひアッ!」
「ッく……う……!」
 甘く溶けた蜜所は淫靡な動きでヒュンケル自身を締め上げる。
 最奥まで侵入しきると、お互いは熱い吐息を零した。がいつものようについ浮かせてしまう背中をベッドに預ける暇もなく、ヒュンケルは腰を動かしはじめた。

 ブラジャーから覗くまろやかなふくらみに手を伸ばしながら、ベッドを軋ませての身体を攻め立てる。ヒュンケルは眼下に広がる光景に、感動にも近い感情が沸き起こっていた。
 全裸とは違った劣情を煽られ、見知らぬ嗜好を引きずり出された。申し訳程度に残った布地から覗く肌の美しさ、艶かしさ。可愛らしい嬌声を上げながら目の前でその身体をくねらせる様を、一瞬たりとも見逃すのが惜しくて瞬きを忘れてしまいそうに見入ってしまう。ヒュンケルはの左足を抱えると自分の肩に乗せた。そして最奥を突くように荒々しく腰を叩き付ける。
「ああッ! あ! っは! あぁンッ!!」
 今まで感じた事のない角度に、は溢れる喘ぎ声を止められない。真っ白い坂に突き落とされるように止まらない快感に、知らずの内に涙が零れ頬を伝う。強烈ともいえる快感を逃げ場もなく与え続けられ、ただただシーツを握りしめ手繰り寄せるしか出来なかった。
 ヒュンケルは滑らかなシルクのストッキングに包まれたの足に唇を寄せながら、更なる快感を貪り求めて前後させる腰の速度を力強く加速していく。
「っひあ! あアっ! あああッ! だ、ダメェ……!」
 ふくらはぎに受けた唇の感触にの感度は弾けた。目の前が真っ白にスパークしていき、辛うじて見えた愛しい人の顔には切ない苦しさが滲んでいる。その余裕のなさはの胸を締め付け、より一層の愛しさと快感に変わった。
「ヒュンケルぅ……! 私……もう……ッ!」
「すまん……! 俺も……!」
「ひぁ、あああんッ!!」
 太腿の上に熱い白濁が放たれた同時に、は意識を遠のかせた。





 翌々日、レオナの私室。

「ゴメンねー。首尾の方、昨日すぐ聞きたかったんだけど、ちょっと……用事が……、さ」
 レオナの頬は綺麗な薔薇色に染まる。
「あっ、あー……! 私もなの、ちょーっと用事があって……、ね」
 の頬も途端に染め上がる。
「……用事?」
「ウン、用事……」
 スケージュールを完璧に把握し合っている間柄で、用事もナニもないだろう。
 部屋には乾いた笑い声が二つ、響くのみだった……。
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(2007.3.24)

永らくお待たせしました、36000HITのキリリクに龍姫さまへ捧げます!
ホント、遅くなってゴメンなさい〜!><難産でした、ゼェハァ。
一応お待ちしてみたものの詳しいシチュの返信がなかったので、いいかなぁ??と思いつつこんなんになってしまいました;
夢主もウチの固定キャラだし……TT お気に召さなかったら言って下さい〜!新たに書くので!!

設定的にはヒュンも夢主も二人とも宮勤め。多分原作から2年後ぐらい……。
でないとダイ様が12歳でハッスルしてる事になってまうので^^;
最後は、二人とも次の日はベッドから起き上がれなかったらしいです。ちゃんちゃん。

龍姫さま、リク狙ってくれて、しかも踏んでくれてありがとうございました〜!!