勘違いランチ


「何よ、コレ」
 コレを見下ろす。

「見て分からないのか、ノヴァだ」
「ンな事は分かるわ! 何で倒れてるんだって聞いてんのよ!」





勘違いランチ





 食に疎い魔族のロン・ベルクと、ボンボンのノヴァ。
 この二人がいる世帯の食糧事情は酷いものだった。ノヴァは弟子入りしてしばらくは鍛冶云々よりも、料理、洗濯などに慣れないと暮らすことさえままならなかった。たまたま遊びに来たはこの小屋の荒み様に顔を引き攣らせた。
 それからというもの、は休日になるとノヴァへの鍛冶ならぬ家事教室を開いていた。

 大戦から一年経って、ノヴァはそれなりに料理も上達してきた。ロン・ベルクと種族も性別も超えて喧嘩友達のようになっていることもあったが、習慣となってしまったかのようには通い続ける。今日もタンドリーチキンサンドとポテトサラダの入ったバスケットを片手にロン・ベルク宅にやってきたのだった。

 だが小屋に入った途端飛び込んできたのは、床の上に大の字で倒れてるノヴァだった。


 ロン・ベルクはテーブルに載ってるコップを指差した。は訝しみながらその空のグラスを手に取る。
「……お酒?」
 残った液体を見る限り無色で水のようだが、香りは紛れもなく酒だった。
「コレを飲んじゃって酔い潰れてるって事?」
「たぶんな」
「何それ」
「目を離した隙にこうなってたんだ。オレだって驚いたわ」
 倒れているノヴァを挟んで仁王立ちの二人。
 は語気を強めていく。
「アンタが驚こうが驚かなかろうが、知ったこっちゃないの! なんでお酒も飲まないノヴァが酔ってんのよ!?」
「これからジャンクのところに行く予定だったんだ。それで酒を携帯用の小瓶に詰め替えて、余った少しをそのコップに移しておいたんだ。それを酒だと思わずにコイツが多分飲んじまって、この有様さ」
 よほど喉が渇いていたのだろうか。匂いを気にする前に飲み干したのだろう。
「オレは出かけてくる。あとはお前が面倒見てやれ」
「な……! 弟子が倒れてるのに遊びに行くの!? サイテー! 信じらんなーい!」
「何とでも言え。スティーヌを連れて来ようかと思ったが、ちょうどお前が来たんだ。任せて何が悪い。それともお前も倒れてるこの坊やを置いて帰るか?」
 そんな事できるわけないのに、このドS魔族め。
 そら、どうする、という顔を見せ、余計の苛立ちを募らせるが、本気で帰る訳にもいかない。この魔族は本気で出かけるつもりだから。
「ぐ……! ……んもう! おぼえていやがれ!」
 悪者のような台詞と共にロン・ベルクを見送った。




 はそうと決まったら早速、倒れてるノヴァを担いで、部屋に運んでベッドに寝かせてやった。そして井戸で水を汲むと、ベッドの脇に水差しとコップ、洗面器を用意した。
「さて……」
 これぐらいしかすることがない。
 倒れたといっても熟睡してるのと一緒で、苦しんでる様子など微塵もないのだ。

 ベッドの横にイスを持ってきて座る。
 自分のひざに肘をつき、両の手の平で顔を支えながらノヴァを覗き込む。無邪気に睡眠を貪る姿はとても幼く見えた。
「ノヴァらしいねぇ、全く……」
 誰に言うともなく、苦笑と共に口からついて出た。
「ん……」
 ノヴァは軽く腕を投げ出し、身じろいだ。
 自分の声に起きてしまっただろうかと、は慌てて口を塞ぐが、どうやら寝やすい姿勢に直しただけで起きてはいないようだった。ホ、と胸をなでおろす。
 もしかしたら、最近疲れていたのかもしれない。はこれをいい機会にしてゆっくり休んで欲しいと思ったのだ。

 ふとその投げ出された手を見た。
 所々赤くなっている。
 きっと爆ぜた金属で焼けてしまったのだろう。元々色の白い方だったノヴァはこの一年で少し肌が焼けた。それは野性的で健康的な雰囲気を匂わし、十七歳になったノヴァのすでに少年ではなく青年としての風貌と相まって、改めて見ればドキリとするほどの魅力があった。

 気付いてないの……?

 何故自分が休日のたびに訪れるのか。彼は考えた事があるのだろうか。
 よもや毎週お弁当を持って現れる便利な飯炊きとは思ってくれてはいまい。だがいつも自分が押しかけるだけで追いかけて来てくれる事なんてなかった。この一年、冷静に考えてみたら勝手に一人で浮かれているだけだったのかもしれない……。

 はどこまでも降りていく気分に嫌気がさし、気分転換に井戸で顔を洗おう、そう思って椅子から立ち上がった。

 寝ていたと思っていたノヴァに腕を掴まれ、 はガクンとつんのめった。
「……っえ!」

 いや、寝ている。
 は恐る恐る顔を覗き込むと、瞼はピクリとも動いていない。寝ぼけて思わず掴んだのだろうか、と思った時だった。

「………………」

 体中の力が抜けるようだった。

夢の中でも自分に逢ってくれるのか。
追いかけて  来てくれるのか  ……

 喜びに全身が包まれるのを感じる。立っていられなくなるほどの心の震えを、抑える事が出来ない。
「勘違い……して、いい……?」
 はそう小さく呟くと、掴んだ腕を辿り、顔をそろりと近付ける。
 そして薄く開かれた唇に自身の唇を重ね合わせた。


 男の人もこんなに柔らかいんだぁ、が素直な感想だった。触れた温もりから幸せが満ち溢れてくるような、ちょっとした感動を味わっていた。
 だが、のん気に感動を味わってる隙に、軽く触れていた唇はあっという間に角度をずらし、二人の隙間を埋めていった。気が付くとノヴァの手はの頭を押さえ、身体を離すことが出来なくなっていた。 は思わず目を開けると、ノヴァの閉じた瞼とぶつかった。

 もしや、まだ寝ぼけてる……!?

 だがキスの熱はどんどん高まり、啄ばむ様だった動きは次第に僅かな隙間さえ惜しむように深く重ねていった。そして柔らかい舌が唇を押し分けて進入してくる。口内を余すことなく蹂躙してくるノヴァの舌は、逃げるの舌を絡め取り愛撫を施していく。
「……っふ……ん……ん……」
 微かに漏れる喘ぎも吸い尽くすように重ね合わせる。その熱さと蠢きには翻弄され、思考能力などとうの昔に崩れ去った。

 気が付くとベッドの中に引きずり込まれ、覆い被さったノヴァに再び熱い口付けを受けていた。ベッドとノヴァに挟まれ、身体をよじる事も叶わない。破裂しそうな心臓はノヴァの身体の重みを一身に受けることでさらにその鼓動をはやめていた。
 手品のように鮮やかなその一連の動作は拒む隙も与えない。
 だがその鮮やかさはのクラクラする頭の隅に、ある一つの可能性を浮かび上がらせた。

 ようやく離れる唇。
 すぐ近くに熱い息遣いを感じる。

 そろそろと意識を覚醒させたノヴァは目の前の光景に絶句した。
 をベッドに組み敷いている。
 泣いてるを。

「ご、ゴメン……! 僕……何て事を……!」

 今まで感じていた唇の甘さは夢ではなかったのか。
 自分はなんて事をしてしまったんだろう。
 掠れる声をなんとか搾り出す。
 はらはらと静かに涙を流すは、小さく呟いた。
「ゴメン……」
「な、何でが謝るんだよ、僕が悪いのに……」
「ちがう、ちがうの……」
 小さく首を振る。

「ノヴァ……好きな人が、付き合ってる人がいるんだね……」

 ノヴァは軽くパニックになっていた。
 目が覚めたらベッドの中でを組み敷いてキスをしていた。しかもは怒りもせず泣きはじめてしまった。さらには何故か謝ったかと思うと、言われもない誤解をされている。いや、好きな人がいるというのは合っているのだが。
「付き合ってる人なんていないよ、どうしてそう思うのさ」
「だって……だって、そうじゃなきゃ…………こんなにキスが上手いくないし、手慣れてるはずないもの!!」
 眩暈がしそうだ。
 手放しそうな意識をなんとか留めて、何故こうなったか原因を突き止めようと、気を落ち着かせるように努めた。深く一呼吸した。
「ええと、……よく聞いて? 僕、恥ずかしいけどこういう事って初めてだよ。その……手慣れてるって言うなら……、それはきっとリンガイア戦士団のみんなのせいっていうか、おかげっていうか……。男だらけだったから、このテの話は飛び交ってたから嫌でも聞かされるし。こういう時はああしろ、そういう時はこうしろ、って。だから知識だけ肥えちゃって……」
 涙がピタリと止む。
「じゃあ……私のド勘違い?」
「うん、そう」
 の目が泳ぎはじめる。
「…………エエと……その……………………さようならっ!」
「ちょっと待った!」
 組み敷かれてる状態で逃げ出せる訳がなかった。ガッシリと腕を掴まれ、そのままベッドに止められる。
「何で泣いてたの?」
「え?」
「僕に付き合ってる人がいると、何では泣くの?」
 ノヴァは嬉しそうで、でも意地の悪い笑顔を見せる。
 は途端に頬を紅潮させる。視線を外し、逃げる場所はないか瞬時に見渡すが、たとえ見つけられても辿り着けはしなかっただろう。両の手を握り締められたままシーツに縫い付けられ、まるで標本のようにピクリと動く事も叶わなかったから。
「それは……その…………わかってるくせに」
「わからないよ。言ってくれないとこのままキスしていいのか、わからないよ」
 恥ずかしげに伏せられた瞼が細かに震えると、先程の涙で濡れた睫毛は艶やかに光ってノヴァの気持ちを昂ぶらせた。その一滴までも舐め取りたいほど扇情的だった。だが、ぐ、と堪え、の小さく告げられる言葉を心待ちにした。

「……好き……。ノヴァが好き……」
「僕も……が好きだよ……」

 ありがとう。
 そう言ってノヴァは今度こそ本当に、気持ちを込めた口付けをの震える唇に落とした。


 蕩ける様に熱い口付けはあっという間にの息をあがらせた。
 やっぱり上手い……
 ボンヤリする意識の隅ではいまだにそんな事を思っていた。初めてのキスで他の人と比べようもないのだけれど、キスってこんなに意識までも蕩けていくようなものなのだろうか? 身体中の力が抜け、でもどこかが揺り起こされるような不思議な感覚。これを他の人も感じられるとは到底思えない。
 だがおぼろげながらでも考え事が出来るのはここまでだった。
 ノヴァの唇はの唇から外れ、顎を通って首筋に辿り着いた。啄ばむ様に首筋をなぞると、蕩けていたの意識を叩き起こした。
「……ッは、あ……! だ、め……だめ……ッ!」
 覆い被さるノヴァを押し退けようとするが、上手く力が入らない。だが抵抗しようとする意志は伝わったようだった。
「……ダメ?」
 仔犬のように見上げてくる瞳を見てしまったら思わず抱き締めたくなってしまう。だがそれは踏み止まらせる。
「だ、だって、その……あ、ほら! ロンが帰ってきちゃうかもしれないし……!」
「先生ならジャンクさんの所でしょ? 一晩ぐらい気にしないで出かけてるよ。あの人、時間を持て余すのいまだに得意なんだ」
 平然とロン・ベルクの行動パターンを言い当て、は何も言い返せない。もそうだと分かってるからだ。
「で、でも……んんと…………ほら……ええと……あ! 心の準備が!」
 これしかない、と笑顔で目を輝かせる。
「準備? じゃあ三秒で準備してね? さーん」
「さ、三秒ッ!?」
「にーい」
「ちょ、ちょちょちょっと!」
「いーち」
「ま、待って待って、あああ!」
「ゼロ」
 は三秒で出来ることは何も浮かばず、思わずギュッと目を瞑った。ノヴァはそんなを上から見つめ、クスリと笑う。そして耳元に顔を寄せると、囁いた。
「もう待てないからね?」



 首筋に這う舌と唇の感触を感じ、は全身が震えた。
 ノヴァは腰の辺りを擦っていた手を徐々に上らせ、洋服に手をかける。そして首筋を舐めながら今度も鮮やかに一枚一枚脱がしていった。熱に翻弄されているは自分が下着だけの姿になっていくのを為す術もなく受けているしかなかった。
 息遣いと共に上下する二つのまろみをノヴァはその手で包んだ。驚くほど柔らかいそこは手の平に吸い付くようで感激すらあった。思ったよりも小さかった肩や細い腰などは「女」のもので、到底、自分と同じように剣技を操るとは考えられない。本当はもっと守ってやらないといけなかったのではないかと、今更ながらに自分を責めはじめてしまう。だが考えるのは後にした。目の前の身体が「女」ならばすることは一つしかなかったのは、妙齢のノヴァには仕方ない事だった。
 ふくらみをやわやわと包むと微かに身じろぐ。指先で薄紅色の突起を弾くと今度はの身体が分かり易く反応した。
「……ッふ……んぅ……」
 微かに身体が弓なりになると、まるで目の前に差し出されるように見えたノヴァは、誘われるようにその突起を口に含む。柔らかいようで硬いそこは、甘く感じた。ノヴァは考えるよりも先に舌が自然と動き出す。先輩達に植え付けられた知識を反芻する間もなく、本能で動いていた。舌先で転がすように撫でてやると、面白いように の身体は跳ね、ノヴァの気を良くした。
 さらに刺激を与えていくと、 の口から零れる喘ぎは自分の意志では抑えられないものになってきた。
「っあ! ……ッは……んん! ……ああ!」
 口に含みながらもう片方の薄紅色の蕾を指で摘むと、所在無げな手が縋るように枕を掴む。初めて感じる快感という波に耐えるようにきつく握り締める。

 愛しい人の身体をこの手で征服する。
 その喜びはノヴァの全身を満たし、昂ぶらせていった。
 白い肌に口付けを次々と落とし、紅い花を散らせていく。その紅い所有印を見下ろすと、今まで感じた事のない満足感を得られ、興奮は最高潮に高まっていく。

 肌を滑るように撫でていくと、中心に辿り着いた。躊躇せず下着の中に右手を滑り込ませると、蕩けんばかりの熱さを持った蜜がノヴァの指に絡みついた。それと同時に隠れた花芽をかすめると、今まで感じた事のない感覚にの身体は電気が走ったように弾けた。
「ひあっ!」
「ここがいいの?」
 指先に当たるぷくりと尖った花芯を指の腹で擦り上げる。
「っああ! っやあ! ……あぁんッ!」
 甘い嬌声があがる。
 ポイント見つけ嬉しくなるノヴァは、素早くの下着を取り去り、円を描くように擦ったり、摘み上げたり、爪先で弾いたりと様々な愛撫を落としていく。
 目の前の白く清らかな肢体からは想像もつかないような淫靡な光景が自分の指先で広がっている。そのアンバランスさにノヴァの情欲は掻きたてられ、自然と口角が上がった。
 緩急をつけながら蠢くノヴァの指に合わせて、自然との腰も揺れ始めた。
「だ……め……ぇっ! そんなに……したら、私……ッ!」
 枕に顔を押し付け、震えながら必死に快感に耐える。
「僕につかまって」
 優しく響く声にすがる様に、はノヴァの首に腕を回す。
  さらに激しく行き来する。
 どこからかやってくる未知の感覚。はソレに意識を絡め取られていく。
 やがてチカチカと目の前がスパークし、なけなしの意識の隅にノヴァの肌の熱さを感じたのが最後だった。
「ひっ……やぁあ! あっ! ゃああっ!!」
 背筋から頭の奥にまで甘い電流が走り抜け、悲鳴とも喘ぎ声ともつかない叫びを上げた。



 たゆたう意識の中、ノヴァの落とす口付けが心地良かった。
 だが段々とさっきまでの乱れた自分を思い出す。
 自分一人が大きな声を出して夢中になって……。
「ゃあ……見ない、で……」
「どうして?」
 ノヴァの指が再び動きはじめた。
「ひっ……アっ! あ……ん……!」
 また痴態を晒してしまう。はかぶりを振るが、なんの抵抗にもならなかった。
「びっくりしてるんだ……」
 何を? 自分の恥ずかしい姿を晒した事にか? 冷水を浴びたように の中で急激に熱が冷めていく。
だがノヴァは依然と優しい微笑みを湛えたままだった。
「だって、すごく綺麗だ……。こんな綺麗なを僕だけが見てるんだと思うと……たまらないよ……」
 そう言って微笑んだ顔は、切なく耐え忍んでいた。
 欲しい……
 思いつめた目はそう訴えている。
 はこの仔犬のような目に本当に弱かった。何でも願いは叶えてあげたくなるような、ズルイ目だ。
 でも、いい。
 は自分からノヴァの唇に自身を重ね合わせる事で、返答にした。

 ノヴァの指は蜜をたっぷりとまぶして、中へ進入させていく。
「すごく熱い……火傷しそうだ……」
 初めて触る女性の中は熱く柔らかかった。そして驚くほど狭かった。これで自分のを受け入れられるのか、不安になってしまう。指一本でこんなにも締め付けてくるというのに。もっとほぐさなくては、とノヴァは指をもう一本増やすと、締め付けは凄いものの難なく入り込めた。
 女の身体は思ったよりもちゃんと受け入れる事が出来るんだと軽く感動しつつも勉強したノヴァは、愛撫をさらに激しくした。
 滑り込ませた三本の指をバラバラに動かし、出し入れする。達したばかりのの身体は、強すぎる快感に最早、喘ぎ声を我慢する事は出来なくなっていた。
「っあアッ! ああん! ……ひあっ! や、アぁ……!」
 ノヴァはふるえる乳房に噛み付くように唇を落とし、屹立した蕾を舐め上げた。
「ひあっ……んぅ……!」
 蕾を口に含みながらの顔を覗くと、虚ろな瞳にぶつかった。

 熱に蕩けた淫らな瞳。
 その眼では手を伸ばし、ノヴァの髪に指を絡ませてくる。

「ノ……ヴァ……」

 甘い女の声で呼ばれると、ノヴァは抑えられない衝動を覚えた。

 荒々しくの唇を貪り、その細い身体を抱き締めた。はノヴァの背中に手を回し、その口付けに懸命になって応える。
 激しく求め合った唇を離すと、荒い息遣いを整える間もなく、耳元に顔を寄せる。
「僕、もう我慢できそうにない……。いい?」
 はピクリと身体を揺らす。
「怖い?」
 顔を合わせる。
「少し……」
 小さく笑顔を見せるがこの後を想像して強張るのを隠せない。
 ノヴァはの両目を片手で軽く押さえた。
「怖くなっちゃうから、目を瞑ってな」
 ノヴァは器用に片手で自らのズボンを脱ぎ去り、一糸まとわぬ姿になった。
 急に目の前を塞がれは驚くが、これはノヴァの優しさなんだと気付いた。興味がないと言えばウソになるが、もし今ここで初めて目にする男の人のアレを見てしまったら、尻込みしていたかもしれない。ノヴァの心遣いがありがたかった。
 ノヴァは足の間を割って身体を滑り込ませる。
 の心臓は一つ一つの拍動が重く、その度に身体を揺らすように、静かに鈍く鼓動していた。
 そして熱い塊がソコに当たるのを感じた。ノヴァは覆っていた手をどかし、視線を捉える。と、次の瞬間、身体を沈めた。
「っあ! ああん! ノヴァぁ……ッ!」
 灼熱のような熱さを持った楔は、の奥にまで達した。
「……っく……ぅ……!」
 キリキリと押し広げ、絡ませる手を握り締めないといられないぐらいの圧迫感がを襲う。震える睫毛と眉間に刻まれたしわがその辛さを物語っている。最高潮に高まった射精感を逃すためにも、ノヴァは軽いキスを何度も降らし、が落ち着くまで待ってやる。顔に汗で張り付いた髪をどかしてやりながら、頬を撫でる。
 やがて呼吸と共に落ち着きを取り戻したは、そろそろと瞑っていた瞳を開けた。
「痛くない? 大丈夫?」
「ん……ちょ……っと、痛、い……。ノヴァは? 痛くない?」
「僕? 僕はね、気持ちいい」
 臆面もなく感想を言われ、はさらに赤面した。
「も、もう……! そういう事、サラッと言わないでよ……!」
「だって本当だもの。のナカ、すっごい気持ちいい。本当はこのままメチャクチャにしたいぐらい」
 ノヴァは笑っていながらも、眉をひそめて必死に耐えていた。その切羽詰った様子はゾクリとする色気を伴っていた。
「ゴ、ゴメン……。ツライ……よね……?」
「いいんだ。が痛がるのは嫌だもの。それにもう動かさせてもらうし」
「え……? ……ひあ!」
 ノヴァの収めていた腰が動きはじめる。
 は治まっていた痛みに再び襲われたが、腰を律動するたびに沸き起こる波がその痛みを打ち消していった。
「っああ! あん! ゃあ! んんぅ……! んあっ……!」
 蜜が溢れはじめ、その動きをよりスムーズにしていった。
 ノヴァに揺さぶられるリズムには溺れるように身体を任せる。時に荒々しく腰を使って抉るように深く突き入れたり、そしてゆっくりと抜き差しする。

 何も考えられなくなるほどの感覚。
 ノヴァが腰を打ち付けるたびに口からついて出る甘い嗚咽。
 これが快感なのか。
 一つになっているという喜びと幸せと気持ち良さ。
 それが全身に満たされるのを文字通り身体で感じている。

 の頬に涙が伝う。
 優しく口付けを落とすのも、いやらしく腰を突き動かすのも、全て愛しいノヴァ。ノヴァに与えられる全ての感覚さえも愛しく感じる。
 はノヴァの頬を両の手で包む。
「す……き……! 好きよ……、ノヴァが……好き……!」
「っ……ッ! ! 好きだよ、君が大好きだ……!」
 思いの丈を吐き出して、さらに一層突き入れる速度を増していく。苛烈な快感がの思考を奪い去る。
 古いベッドは打ち付ける度にギシギシと鳴るが、の嬌声がそれを打ち消す。
 強い締め付けに絶頂が近いことを感じる。ノヴァはの腰を掴み、力強く突き入れた。
「ああ! あ! ゃああ! イイ……ッ!」
「一緒に……イこう……?」
「うんっ、も……っ、イッ……ちゃ……! あ! ッああアっ!!」
 揺さぶられる意識の中、はその真っ白な高揚感に身を委ねた。
 そして強烈な締め付けを感じ、ノヴァは熱い想いを解き放った。







「やっぱり、騙された」

 甘い余韻に浸りつつ、温かい素肌の感触を味わっていたところに、の憮然とした呟きが響いた。
「え? ど、どうしたんだよ」
 せっかくの事後の甘いひと時なのに、騙された、とは穏やかでない。
「やっぱりノヴァ、初めてなんてウソでしょう!?」
「ええと…………?」

「だって初めての人があんなに上手な訳ないもの!」

 眩暈がした。

 腕枕から抜け出し、頬を真っ赤にしてフルフルと震えている。先程までのことを思い出してるのか。
「……誉めてくれてんのかな……? もう、喜んどこうっか」
 カワイイやきもちと知って気を良くしながら、と同じように身体をうつ伏せにする。
「だって……!」
「恥ずかしいこと何度も言わせないでよ、初めてですぅー!」
 うつ伏せで枕に顔を埋めながら、少し頬を紅くして口を尖らす。
 くそぅ、カワイイじゃないか……
 はノヴァの頭をものすごい勢いで撫でたくなった。

 それと同時に凍りついた。
 じゃあ、初めてであんな事やこんな事やそんな事を知識として知っていたとはいえ、サラリとやってのけたのか。本人も気付いていない才能に今後どうなってしまうんだと、我が身の将来を想像しては赤面しつつも青ざめた。

 横で顔を赤くしたり青くしたりして忙しいを見ながら、ノヴァは小さく笑った。
「そういえば、何で僕に謝ったの?」
「え?」
「さっきだよ。僕に付き合ってる人がいたとしたら、何では謝ったの?」
 もう既に誰かとお付き合いしている人がいるノヴァの、唇を奪っちゃったと思ったから、とは言えない。寝込みを襲って、しかもその流れでこうなったとは、口が避けても言えないッ!
「さ〜? ん〜? えと……勢い?」
「勢いって……」
 何のだよ、という言葉を聞く前には誤魔化した。
「あ! そうだ! お弁当!」
 ここに来た本当の目的を、正直、やっと思い出した。ノヴァはそれほど気にすることではないのか、と上手く騙されてくれた事で、それ以上問い質す事はなかった。
「服着るから向こう向いててね」
「今更じゃないの……?」
 そんな呟きはムリヤリ首をひねられ、呻きと共に消え去った。かすかな衣ずれの音を背後に感じながらノヴァは首をさすりつつおとなしく待った。
「はい、いいよ」
 そう言われて振り返ると、スパイシーないい香りのするモノを口に突っ込まれた。
「むが」
「はい、今日のもおいしいよ〜。召し上がれ」
 ニコニコといつもの笑顔を見せる
 初めて床を共にしたら普通は、身をすり寄せてきて伏し目がちに「幸せ……」なんて甘い言葉が聞けるのかと思いきや、現実には首をひねられ、早速腹ごしらえをする目の前の愛しい人。

 諸先輩方に教えられたような女性とは違い、一筋縄には行かないようだ。
 この子らしいと言えば、らしいんだろう。
 そんな掴み所のないようでいて、でも颯爽と吹き抜ける風のような彼女に自分は惚れたんだと思う。

「いただきます」
 ノヴァは苦笑し、まだ淡い温もりを残すの身体に寄り添いながら、タンドリーチキンサンドを改めてほおばった。
/ Top /


(2006.6.12)

サチヨ様お待たせしました〜!ノヴァにいただかれて下され〜!
「ボンボンだからフェミニストなんだろうなぁ〜。鍛冶やるぐらいだから手先が器用なのでは?つまりテクニシャンなのでは!?」
という脳内捏造設定の下、出来上がりました。
なんか、はじめて若いカップルの夢も希望もある、等身大なエチを書いた気がします。
ほら、ウチのアバン先生、ムリヤリとか普通に出来ちゃうどうしようもない変態だから(それは私)

ノヴァのイメージがあまり出来上がってないので、むしろ書き易い所もありました。
コイツ、カワイイなぁカワイイなぁ〜(*´Д`)なんて思いながら書いてました。オススメは口を尖らしてるトコロv

と、いう訳で、サチヨさんいかがだったでしょうか?
近年稀に見るノヴァ大好きっ子のサチヨさんのご期待に副えられたでしょうか。
イメージ崩しちゃったらゴメンなさい!(*_ _)人

サチヨ様のみお持ちかえり可。