あかいいと 1
目の前に広がるのは真っ白なベール。
薄っすらと透けて見える花嫁衣装が自分の身体から伸びている事実に、感慨もなくただ見下ろしている。
(この世界でも、未婚の女が花嫁衣裳を着ると婚期が遅れるなんていう迷信はあるんだろうか)
そんな妙齢の女性特有の心配をしていた時、この謁見の間のドアが開く音がした。膝を折って新郎を待っていたは、さらにこうべを垂れて、目の前の椅子に到着するのを待つ。脇で重い大動物が通ったような振動を感じる。そしてややあると、枯れ木の悲鳴のような音をさせて紫檀の椅子に腰掛けた。
着席したのを感じると、はほんの少しだけ顔を上げる。そして数メートル先では最早判別出来ないほどの厚みのベール越しに、射抜くような視線で新郎となる男の挙動を見守った。男は五つの指輪をはめた太い指を、招くように蠢かす。
「苦しゅうない。近う」
あかいいと
「右だな」
「左ですね」
「真っ直ぐ……だと思う」
右も左も真っ直ぐも、同じような景色しか広がらない山中。一人の男と二人の少年少女が、頭を寄せて地図を覗き込んでいた。だが地図をどう読んでも、上下左右グルグルと回しても、もう数時間はこの景色から抜け出せずにいる。この状態を一般的にはこう言う。
「迷子だな」
「迷子です……」
「ノンノンノン! 迷子じゃありませんよ、あなたたち! ちょっと回り道してる最中です!」
アバンは地図をさらに覗き込む。
「私の方向感覚は渡り鳥並みなんですよ? それが……ううむ……おかしいな」
そんなに地図に顔を近づけたら見えないだろうに。弟子の二人は肩をすくめる。そして師が諦めて他の方法を考えついてくれるまで休もうと、二人は慣れたように荷物を置いて腰を下ろした。水筒の水を交互に廻し飲む。「ったく、負けず嫌いなんだからー」というポップの呟きに、アバンは眼鏡を光らせて振り向いた。
「こんなにしょっちゅう迷ってたら、冒険者としての沽券に関わるでしょう!」
「コカン?」
にやりとしたポップに、目にも止まらぬ速さでチョップを繰り出す。
「いって!」
「女の子のいる前で全く……!」
「だってお約束でしょう!?」
口を覆おうとするアバンとそれから逃げ出そうとするポップとがじゃれ合ってるのを見て、は溜め息を吐きながら頭を細かく振り、席を外してしまう。
「あいつ、「これだから男ってバカね」って目ぇしてましたよ?」
「わ、私も込みですかっ!?」
やれやれ。そう心の中で呟きながら、水筒に口を付ける。背中の賑やかさをよそに、が何気なく周りを見渡した時だった。
「ねえ、あれ何かしら? ……人?」
の言葉に賑やかさを止めると、アバンとポップの二人はゆび指す方向を見やった。
確かにあれは人だ。まさかと思ったが、細長くそびえ立つ垂直に近い崖を、張り付くようにしてよじ登っているではないか。途端に、その危険さに肝を冷やす。この辺りは緑多い山の中といっても岩肌が多く露出している場所で、そこに叩きつけられれば怪我などではすまない。
「な、何やってんだ、あの人!」
「あ、あれ!」
そこへ空から大きな鳥が飛来してきた。その怪鳥は大きく鋭いくちばしと尖った爪を崖の途中の人物に向け、大きな啼き声を上げて威嚇する。人の何倍もある巨大な翼の羽ばたきで、今にも落とされそうだ。
「あれはガルーダ!?」
「いや、ごくらくちょうです。こんな所にも生息しているんですか、珍しいですねぇ」
「何を暢気な!」
ポップが喚いた時には既にアバンは駆け出していた。あっという間に崖の下まで辿り着くと、地を蹴り、高く飛び上がる。そして抜刀と同時に繰り出された剣圧が衝撃波となって、ごくらくちょうの風切羽を数枚切り裂いた。上手く飛行できなくなったごくらくちょうは、ふらふらと危なげに、弱々しい啼き声を残して去っていってしまった。ポップとの歓声が上がる。
だがごくらくちょうが去っても、崖を上っていた人物の手は限界に近く、とうとう崖肌から離れてしまう。
「うわあっ!」
男のその悲鳴に、二人は思わず顔を両手で挟み込んだ。肝を氷点下まで冷やしたような冷たさを腹の中に感じる。が、そこはアバン。瞬きも出来ないその瞬間に、当然のように落ちていく男を抱え、そして華麗に着地した。
ポップとは大きく安堵の息を吐いて、彼らに駆け寄った。
「あ、ありがとう! 助かったよ……!」
「いえいえ。どうしたしまして」
二十歳ぐらいの青年は、驚きでまだ呼吸も整わない感じであったが、幸いにも怪我などしていない様子だった。どうにか身体を落ち着かせると、自身の埃などをはたき、アバンに感謝の握手を差し出す。
「本当にありがとう。あんたがいてくれなかったら、オレはペシャンコになっていた」
「たまたま通りかかっただけですから」
アバンは笑いながら剣を鞘に収めると、ポップたちが駆け寄ってきた。
「オレはこのコルネイの地の民、ルウっていうんだ。あんた達は旅人かい?」
「ええ。――ですが、その……実は、道に迷ってまして」
あはは、と後ろの二人と共に、きまりが悪いような笑みを見せる。快活そうな人柄が見えるルウは、白い歯を見せて笑った。
「だと思ったよ。こんな辺境に来る旅人は珍しいし、それにこの辺は磁場が狂ってて人の方向感覚をおかしくするんだ。慣れてないとすぐに迷って、あのごくらくちょうのエサさ」
顎で空を指し示す。アバンはそういう事だったのかと、大げさに頷いて見せた。弟子二人は勿論、肩をすくめている。
「それにしてもあんな所で何をしていたんです? ロッククライミングって訳でもないでしょう?」
「ああ、コレを採ってたんだよ」
そう言ってルウは太目のウェストベルトの間から大事そうに、赤い花を取り出した。三人は覗き込むようにして、その小さな花を見つめる。
「これはアカイロコノハナっていうんだ。パッと見は赤いんだけどさ、ホラ、こうして角度を変えて見ると、花びらの中に虹色みたいなグラデーションが見えるんだ。宝石みたいでキレイだろう? 別名『虹の石』っていうんだぜ」
確かに美しい花だ。五枚のつややかな花弁がキラキラと光っていて、まさに小さな宝石が連なっているようだった。
「ただ手に入れるには、今みたく危険で大変なんだ。ごくらくちょうっていうのは、集める習性があるほど光モンが好きでさ、このアカイロコノハナもやつらのお気に入りなんだ。しかもあの崖のてっぺんにしか生えてないこの花の為に、奴らはあそこに巣を構えて住み着いちまった。もう見るのも採るのも一苦労さ」
ルウは今までの苦労を思い出すかのように、嘆息を吐いた。
「だからこそ、この花を持ってると幸せになれるって言われてるんだぜ! ああ、そうだ。二つ採ってきたし、助けてくれたお礼に一つやるよ!」
怒涛の様に話し続けられ、その勢いのまま胸の辺りに押し付けられてしまえば、受け取らざるを得ない。アバンはお礼を言って受け取った。
「やれやれ、あのごくらくちょうには悪い事をしてしまいましたね」
住処の近くを荒らされたんでは、誰だって怒りもする。アバンはごくらくちょうの風切羽が一日も早く生え揃う事を願った。だがそう言いながらも、眼鏡の前でクルクルと回しながら観察してしまうのは、染み付いた好奇心と習慣ゆえか。
「あぶねぇことすんなぁ。あんな危険な目にあってまで幸せになりたいのか?」
ポップの言葉を受けて、今まで明るかったルウの表情に一気に陰りが落ちた。
「オレじゃねぇよ。オレの……幼馴染にやるんだ」
「幼馴染?」
「実は……明日、幼馴染が嫁にいくんだ……」
邪推ながら、この青年はその幼馴染の事を想っているのかもしれない。けれども寂しさから顔を曇らせているとは思えないほど、その表情は怒りと悔しさに満ちていた。そこまで強く想っているなら、落胆もさぞ深いものだろう。そう思ったアバンは、気を落とさないように、との思いを込めて努めて明るく笑顔を見せた。
「そうでしたか……ではあなたも寂しくなりますね。でも花嫁には幸せになってもらいたいですものね。きっとその花をもらえば喜……」
「違う!!」
空気が驚愕で止まった。
「……花嫁なんて可愛いもんじゃない、――生贄さ」
テランの北西、山間の地、コルネイ。
地名は耳に引っ掛かる程度に聞いた事があっても、集落があるとはアバンですら知らなかった。山の斜面に緑が生い茂り、何かを栽培しているのが見える。働く人の姿も見えたが、どの人もひっそり、ひっそりと背を丸めて隠れるようにしている気がした。どことなく、村の雰囲気は良いものには思えない。
ルウに連れ添われて村の集会所に入っていくと、その異様さに息を呑んだ。まるで闇夜のような暗さ。点々と灯る明かりが建物の広さにしては少ないだけ、というわけではない気がする。数十人はいるであろうが、どの人も顔に深い影を落とし、笑顔など見当たらない。この漂う悲壮感はただ事ではない。
実際、涙をすする声もする。泣き声の主の少女は、母親だと思しき初老の女性に向かって、肩を震わせて咽び泣いていた。だが周りの者は少女を慰めるでもなく、ただ背を丸めてその悲痛さに耐え忍んでいる。この光景は何なのだ、とアバンたち三人は眉を顰めそうになった。
ルウは人の間を掻き分け、その少女に向かって歩いていく。
「ケーティ……!」
「……ルウ?」
振り向いた顔は涙に濡れ、長いヘーゼル色の髪が所々に張り付いている。きっと長い間泣いていたんだろう、目のまわりを赤く腫れあがらせていた。ルウの姿を見つけると一目散に駆け寄ってきた。
「ルウ、どこに行ってたの? 私、探してたのよ?」
「悪い。これを……採りに行ってたんだ」
そう言ってケーティという少女に握らせたのは先程の花。ケーティは驚きに目を丸くさせた。
「これ、アカイロコノハナじゃないの」
「ああ、お前に……幸せになってもらいたくて」
「ルウ……!」
一度は止んだ大粒の涙が、再び滑らかな頬を転がっていく。小さな花を抱き締めて、ケーティはルウの肩にしばらく頭を預けた。そして懸命に涙を抑えて、ルウを見つめ返す。
「採るの大変だったでしょう? 怪我しなかった?」
「それがさ、危ない所だったんだけど、この人達に助けてもらったんだ」
ルウはアバンたちを紹介した。
「よくここまで辿り着きましたな」
ルウの話を聞いたケーティの父は驚きを隠せない。まわりにいる村人達も久しぶりの旅人の姿に驚いている。
「ハハ、道に迷っただけでして」
アバンは頬をかいて笑った。少し大げさに笑ったのは、ここの雰囲気を少しでも明るくしようと思っての事だったのだが、それも効果がなかったらしい。相変わらず葬式のような暗さだったが、後から考えればそれもあながち間違ってはいないようだった。アバンは尋ねてみる事にした。
「ルウくんの話では、何やらただ事ではない様子。よければお聞かせ願えますか?」
「はぁ、ですが何から話せばよいものか……。あまりにも長い間の事でして」
思い出された出来事ですら心痛をかけるのか、ケーティの父と周りの者達は、途端に顔に疲れと悲哀を浮かばせる。その面持ちはあまりにも重く、痛々しい。そしてゆっくりと口を開いてくれた。
「ここコルネイの地には領主がおります。北西の一番大きな屋敷に住んでいるガーマルがその人です。十数年前になりますか、我々にはもっと前のような気がしますが、領主ガーマルはこの地に赴任してまいりました。そしてその日より、我々の苦難が始まったのです。奴隷のように働かされ、多くの制約と共に我々を縛り付けました。日々を生き抜くのに精いっぱいで、明日も見えず、皆心身ともに疲弊しております」
いまどき珍しい封建主義だな、とポップは低く呟いた。確かにこんな前時代的な支配は今はもうどこにも見られない。周りを見渡せば若人も頬はこけ、赤ん坊は痩せ、どこの村で見た人達よりもボロを纏っている。にはこの世界の統治のあり方などまだ熟知出来ていなかったが、この有様は異常であるという事だけは分かった。
「ここは……カールの領地ですか?」
「いいや、ベンガーナだ」
「ふぅむ、おかしいですねぇ……」
アバンは顎に手を当てて呻いた。
「国に陳情はされないので?」
「こんな山奥の小さな村、国は気にも留めない。何度か隠れて陳情したがどこからか露見し、屋敷に住まわせているごろつきどもに酷い目に遭わされた。ここから逃げ出したくても、奴らが残る村人に何をするか分かったもんじゃないし、それに我々にはこの地を離れて生きていく術もないんだ……」
聞いているだけで身体が痛くなってくるその悲惨さに、は眉根を寄せる。
「しかも数年前、先の大戦の勇者様だという方が、旧知の間柄の領主のところへ訪ねてきた。お忍びらしく、人知れず今も屋敷に逗留している」
アバンの眉がピクリと動いた。
「領主は大きな力を得てさらにのさばり、我々は次々に貢物を貢がされ、村の貯えを根こそぎ奪われてしまった。さらには花嫁も所望してきた。もうこれで五人目だ……!」
「あとの四人は?」
「皆、戻ってこない。おそらく……」
「ひどい……!」
娘たちの親と思われる者が数名、途端に泣き伏した。同じ末路を辿ると嫌でも容易に想像できてしまうケーティも、その恐怖に泣き崩れる。ルウはその身体を必死に抱き締め、自分も苦しさに耐えようと歯を食いしばる。
「花嫁など名ばかりだ! 酒の肴程度にしか思っておらん! 遺体が戻ってくるだけで御の字で、彼奴らは何事もなかったかのように次の花嫁を所望してきおった……!!」
ケーティの父も顔を真っ赤にして、身体中を怒りに震わせて話している。口にするだけで爆発しそうな怒りを感じるのに、堪えて話してくれているのだ。アバンはその意気を痛いほど感じ取り、そして意を決した。それに個人的な事情もある。アバンは肩越しに弟子に声を掛けた。
「私としては見過ごせなくなってしまいましたが、どうですか?」
「同感です」
「ちょ、ちょ、ちょっと! 二人とも! こんなの俺たちだけで受けられる問題じゃないッスよ!?」
渋るポップをお構いなしに素通りし、「まぁそういう訳で、ぜひお手伝いさせていただければと思います」そう言ってアバンは村人達に向かって、大きく口角を上げて見せた。集会所にいた誰もが一様に驚きを隠せない。この惨状を話せるだけでも稀有なのに、まさか何かをしてくれようとする者がいるだなんて。
するとアバンは分かりやすい笑顔から、眉に力を入れ毅然とした表情に変えた。
「ですがこの子の言うとおり、私たちだけでは難しい。村一丸となって立ち向かわなくてはいけません。……その覚悟はありますか?」
その言葉に即座に返したのはルウだった。
「オレはある! ケーティをあんなヤツの許にやってたまるか! それに、この奴隷のような生活はウンザリだ! みんな! 俺たちは十分苦しんだ! もう立ち上がる時じゃないのか!?」
言葉こそなかったが、隣の者と顔を合わせていくとそれは小さな頷きに、そして抗う強さを込めた瞳へと、この集会所の隅にまで段々と広がっていった。そして「やろう!」「やってやろう!」と、その意気を口にしはじめると、加速度的に昂ぶっていく。今まで一筋の光明も見えなかった明日に、はじめて灯った明かりなのだ。戸惑いながらも、村人はその期待に瞳を輝かせた。
「ですが、どうするおつもりで?」
ケーティの父はアバンに尋ねた。
「この子に囮になってもらいます」
向けた手の先。そこにはがいた。
何十もの瞳をその一身に受けても、は表情を変えずに微動だにしない。
「その間に準備を進め、領主らを一網打尽にしましょう」
「ですが、危険です!」
「このお人、すげぇ強いんだぜ! きっと大丈夫だよ、ピットおじさん!」
「ルウ! お前は黙っていろ!」
ピットの急な怒声にルウは言葉を失った。何でそんなに怒っているのか、ルウには分からなかった。せっかく希望を見出して気持ちを高めていく時だと思っていたのに、釈然としない。だがアバンは、そうさせるピットの心情に察しがついている。
「大丈夫です、ピットさん。この子は女の子ですが訓練を積んでいますし、私もその力を保障します。どうです、?」
「はい、構いません」
「だがお嬢さん!」
ピットがそう言っても、の瞳は強く真っ直ぐ前を向いている。その揺るぎなさに息を呑みもしたが、易々と送り出すわけにもいかない。ピットは今度はアバンに向かった。
「こんな幼い子にあまりにも酷じゃないですか! 何かあったらどうするんだ! 領主ガーマルは非情、卑劣、淫蕩の限りを尽くす悪党だ、その前に出て無傷では済まない! それをこんな……!」
と同じ年頃の娘を持つ親としては、進んであの悪漢の前に差し出すなど出来なかった。この子にだって遠くにでも、もし死んでいても、親はあるはず。その気持ちを考えてやれば、自分が止めてやるしかない。それをこの人は当然のように、顔色一つ変えずに提案してくる。
「助けてもらうのにこんな言い方はないと思うが……あんた、信用してもいいのかい?」
「おじさん!!」
ルウは声を上げたが、アバンはそれを制す。
「いいえ、そう思われて当然です。ただ、私はあなた方を救えたらと思っていますし、出来る限りの事をしたいと思っている。これは嘘でも飾りでもなく、率直な思いです。何か法外な礼や金品を欲しがっているとかでもないので安心して下さい。命をかけてまで物好きな、と思われるでしょうが、これは性分みたいなもんでして。まぁ、大船に乗ったつもりでお任せ下さい。――だからもう大丈夫ですよ、お嬢さん。さぁ涙を拭いて」
アバンはケーティに微笑んだ。目を細めて柔らかに笑うその笑顔は、ケーティの涙を止めさせる。奇天烈な格好をしているのに、その面持ちはどこまでも優しい。ケーティは驚くほど気持ちが落ち着くのを感じた。
それを感じ取ると、アバンは眼鏡のブリッジを一度押し上げ、胸と声を張った。
「皆さん、覚悟は決められましたか? ……ふむ、よろしい。まず最初に言っておきますが、我々の目的は領主らをただ倒すだけではない。逃げ道を与えず、官吏にまことの現状をその目に映させ、そして引き渡す事を目的とします。その手で報復をしたい気持ちも分かりますが、罰を科するのは我々ではない、王です。正当な量刑が下される事を望まれますが、正しく状況を見てもらえれば、それについては問題ないでしょう。――では、時間がありませんので、すぐに行動に移りたいと思います。ルウくん。カールの王都に行った事は?」
「あ、ああ、ある」
「よろしい。ではこのキメラの翼ですぐに王都へ飛んでください。そしてカール騎士団の詰所に向かい、これから私が書く書状を渡すのです」
「カールだって? ベンガーナじゃないのか?」
「私の推測だとカールです」
「それに騎士団? 彼らは俺なんかの話を聞いちゃくれないよ!」
「まぁ、なかなかすぐには話を聞いてくれないとは思うんですけどね。これから私が言う口上を、門衛に向かって高らかに述べなさい。きっと驚く事が起きますよよ……? ではいいですか、一言一句間違えずに覚えてくださいね? 紙には書き残せませんので。ああ、皆さんはどうか耳を塞いで。ではオッホン――『獅子は鋼の牙を蒼穹に突き立てる。鷹は……』」