モノクロ 6
寝付けぬ夜が息苦しくて、私はベランダに出ていたずらに時間を潰していた。
見上げれば切れ切れの雲の隙間から星空が控え目に瞬く。
今夜は風が強い。
ざわざわと騒ぐ木々の声に紛れて、私は深い嘆息をもらした。
夜は嫌いだった。
このまま闇に紛れて心が朽ちていきそうだったから。
星空は嫌いだった。
星になった先生に会いたくなかったから。
今でもあの頃の想いが脳裏を過ぎれば、涙腺は過敏に反応する。
風が頬を伝う涙を冷やし、ひんやりとする軌跡を描いた。
夜はもう明けないと思った。
だが当然、無情にも日は昇る。
生きろ、とその日の中へ有無を言わさず押し出された。
あんなに凍える朝はかつて感じた事がない。
その日からの世界は、まるで無彩色で彩られたように、鮮やかな色を失った。
そんな世界を 先生は見た事がある……?
溢れそうになった涙を手の甲で拭おうとすると、一際強い風が吹いた。沈みこむ気持ちを一度かき混ぜるように。
頬を冷やした涙も吹き飛ばされ、私は目が覚めたように意識をハッキリとさせる事が出来た。その風に安堵の息を漏らしながら小さく感謝さえした。
そして背後でカーテンが風に煽られてバタバタとはためく音を立てているのに気付く。
いけない。窓を開けたままだったんだ。
私は風で壁に打ちつけられて割れてしまう心配に、慌てて振り返った。
が、振り向いた先にいたのは
「アバン先生」
そう言うつもりだった言葉は、あっという間に抱き留められた先生の腕の中に消えた。
思ったよりも身体が冷えていたのか、それとも心が冷えていたのか、先生の温もりを熱いぐらいに感じる。私は呆けていた頭をその熱で起こす。
「……せ、せんせ……!」
思わず身体を引き剥がそうと、アバン先生の胸とに挟まれた手で押し返す。だが私の身体を抱きしめる腕の力は微塵も弱まる事はなく、むしろより一層、胸の中に抱え込んだ。
「っやぁ……!」
いい加減、子供の自分に嫌気が差す。
まだ喧嘩を続行しているはずなのだから、素直に抱き留められはしない。そんななけなしの意地が邪魔だと思いつつも追い出す事が出来なかった。
そんな私の気持ちを分かっていてそれでも尚離すまいとしているのか、先生の胸から顔を離す事も叶わずそのまま埋められてしまう。抱きしめるというよりも縋るように力を込められている。
「しばらく……このままで……」
小さく囁かれたその言葉の真摯さから、私はやがて抵抗する事をやめた。
布越しに先生の厚い胸を感じる。
鼻を掠めるのは、懐かしい香り。
大好きだったお日様のようなあったかい香りを、私は胸いっぱいに満たした。
そうだ。
まだ不安だったんだ。
拭いきれない不安を払うには、抱き締めてもらうだけでよかったんだ。
たくさんの愛の言葉も謝罪の言葉も、それだけでは足りない。
ただ感じたかった。
先生がいるという現実を温度で感じたかった。
確かに刻む熱い鼓動に耳を澄ましたかったんだ。
それだけでこの不安は拭えたのだ。
私は胸の中から顔を上げると、アバン先生の顔を撫で付けるように両手で包んだ。
「先生……先生ぇ……。いるのね……?ちゃんと、ここにいるのね……?」
その言葉を聞くと何かに気付くようにハッとすると、先生はまるで今にも泣き出しそうな顔で、儚く微笑んだ。
「はい……いますよ、ちゃんと」
その顔を見て私も鼻の奥がつんとするのを感じる。
「本当に……? 本当に……いるのね……?」
しつこいと思いつつ何度も確認してしまう。確かめたくて顔中にぴたぴたと手を這わせる。だが消えない温度に今度こそ現実味を帯びて喜びが込み上げてくる。
「ええ。の側に」
そう言って頬を触る私の手に、先生の大きくて温かい手を重ね合わせる。
優しく微笑むアバン先生を見て、弾けるように先生の首へ手を回した。
私の中の渇いたところに 滲みこんでいく
世界に 色が戻った気がする
「――先生! アバンせんせぇ……!」
私は何度も何度も呼んだ。
愛しい人の名を。
「……、……っ!」
名を呼んで返ってくる。
たったそれだけの事が、何と喜ばしい事か。
ああ、帰ってきたんだ、と、私はこの瞬間に心から感じる事が出来たんだと思う。
首に回していた腕を解くと、私は先生と額を合わせて泣き笑いながら名を呼び続けた。
「アバン先生……」
「……」
「先生ぇ……」
「……」
うずうずと可笑しさが込み上げてくる。先程まで泣いていたのが嘘の様に。
他から見れば目を覆いたくなるような甘さだろうが、そこは目を瞑って欲しい。私自身もこんなに甘い空気があったのかと初めて知ったほどだった。その小さくて暖かな空間が愛しくて、私は大事に大事に浸った。
額を合わせて小さく笑い合っていると、そのうち、私の呼びかけに先生はキスで答えるようになった。啄ばむように落とす口付けが可愛らしくて、つい可笑しくなってしまい、私もじゃれ合いを続けるように名を呼ぶ。
だが一回のキスの時間が長くなり、濃さが増してくると、たちまち息はあがってしまい名など呼べなくなってしまった。出るのは唇の隙間から漏れる吐息だけ。
「……っふ……んぅ……ん……」
髪に指を滑り込ませ、後頭部を支えながら角度を変えて何度も何度も唇を重ねてくる。
蠢く熱に翻弄され、その甘さに意識が蕩けそうになってはいたが、私は驚くほど冷静だった。先生の身体の熱さをどれ一つも取り零したくなくて、自ら取りに行くように舌を伸ばす。その動きに熱っぽく応えてくれる先生の舌は、とてもエロティックだった。
息継ぎのために少し離しても、その距離さえもどかしくてすぐに噛み付くように口付けを交わす。形振り構わず、この三ヶ月間溜め込んだ想いをぶつけるように。
一体どのくらいの時間、キスしていたんだろう。飲み込めなかった互いの交じり合った唾液が顎に伝っているのを感じる。
でも先生にちゃんと伝えないといけない事を思い出し、私は名残惜しくも唇を遠ざける。
と、試みても、先生はなかなか唇を離してくれない。
引けば追い、逃すまいとするその必死さにまたも身の内に熱が燻るのを感じ、また唇を重ね合わせたい衝動に駆られるが、何とか我慢した。ほんの少し出来た隙間で私は一度酸素を取り込む。今にも口付けを落とそうとする先生を留めて口を開いた。
「せんせ……ごめん、ごめんね……」
「……?」
「ごめんね……、ただの嫉妬だったの。……でも先生ならきっと自分を選んでくれるはずだって、自惚れてるだけど、分かってた……。分かってて困らせたの。私のほんの少しの不安を否定して欲しくて、甘えてただけなんです……ごめんなさい……」
「いいえ、謝るのは私の方だ!頭でっかちに説明ばかりしようとして、貴女の気持ちも考えなかった。それに、私が思っていたよりもずっと深く私は貴女を傷付けていたんですね……。ごめんなさい、
。私は……勝手だった!」
「ううん!私が我が侭だったの!ちゃんと言葉にすればよかったの……!」
「貴女は何も悪くない! 私が不甲斐無いから……!」
「ううん、私が――!」
「いえ、私が――!」
まるでどこか街角のカップルの問答を一通り披露すると、見合った私達は一瞬時間を止め、そして思わず吹き出してしまった。
額を合わせながら肩を揺らす。
二人で囲んでいる空間がとても暖かい。
「ふふっ……私達も頑固ですね」
「うん、ガンコだ」
くすくすと、お腹の底から湧き上がってくる笑いが止まらない。とても柔らかくて甘い、わたあめのようなこの空間を久しぶりに感じている。笑わずにいられないほどの温もりを、忘れていたこの温もりを、感じている。
「仲直りしましょう」
「はい」
初めての喧嘩は笑いながらのキスで終わりを告げた。
だがそんな軽いキスはそれ一回だけ。
そのまま重ねていた唇は妖しく蠢きはじめ、先程の熱が再び燻る。貪るように求め合い、空いた手は少しでもお互いの身体を慈しみたくて、撫で付けるように髪を指に絡ませる。
キスしても、しても、し足らない。
燃え盛るような欲求が止まらない。
いっそのこと、このまま蕩けて身体が一つになってしまえばこの苛烈な衝動は治まるのだろうかと思うほど、欲していた。
「んぅ……ふぁ、ん……!」
漏れる吐息は既に喘ぎ声。
執拗に攻める舌の愛撫は私の足をぐらつかせ、最早首に回す腕でぶら下がっているような状態だった。
先生は唇を離すと、乱暴に私の手を取ってベランダから部屋へ引っ張り込んだ。私は覚束ない足で引きずるように連れられると、ボンヤリするアタマにベッドが飛び込んできた。
それが何を意味するか分かってる。
ベッドの側まで来ると先生は振り向いて、掴んでいた私の手を引き寄せ、一度強く抱き締める。そして眼鏡を毟り取るように外すと、噛み付くような口付けを落とした。
眼鏡をベッドに放り投げたのが上手く乗らなかったのか、床に落ちる硬質な音が響く。キスしながらで見えないにしても、それぐらいが成功しないほど必死になっているのか。
だが、そんな先生を笑う事など出来ない。
何故なら私も眼鏡が落ちた音なんて感知してないほど一心不乱に先生の服を脱がしていたから。
私達は唇を一時も離したくなくて、重ね合わせながら器用にお互いの服を脱がせていく。いや、視線は服を凝視していたし、キスは乱暴だったし、もどかしさに引き裂かんばかりの勢いで脱がせていたのだから、器用と言えないかもしれない。薄い夜着を不器用ながらもあっという間に肌蹴させると、私達は崩れるようにベッドへ沈み込んだ。
引き締まった逞しい筋肉を覆う滑らかな肌も、耳元で吹きかけられる切ない吐息も、太腿に当たる自己主張する塊も、全てが熱かった。
火傷しそうなそれらの熱さを全身で感じる。先生の身体の重みさえ愛しい。涙が出そうなほど、私は全身で先生の身体を欲していた。
あれからずっと、抑え付けて抑え付けて、身体の奥底に追いやった欲望が、息を吹き返すように芽吹くのを感じる。抑え付けてた分爆発するように、羞恥心さえ吹き飛ばすほど渇望している。
先生の熱い唇が首筋を這う。ゾクリとする感覚に思わず背を仰け反らせ、その隙に秘部へ指が伸びる。
「ぅん……! あぁ……ッ!」
指が滑るように沿うのがわかる。驚くほど濡れているのだ。滾々と湧き出る泉のように、欲望も蜜も、止まらない。
もう、限界だった。
しがみ付くように先生の首に腕を回すと、私は声を絞り出して懇願する。
「お願い……欲しいの……!」
先生の身体が小さく波うった。
そして荒々しく私の足を広げて腰を割り込ませると、驚くほど天を仰いでいた先生自身を差し込んだ。
「ああああッ!」
一気に根元まで穿つと、先生はぶるっと身体を震わせる。
熱くて、それにとても大きい……
心まで満たすまほどの充足感に、知らずの内に涙が流れた。
たまらない。
欲しくて欲しくて、喉から手が出るほど欲しがっていた、二度と感じる事が出来なかったかもしれないこの熱を、今確かに感じている。
私の中にいる。
先生がいる。
涙は止め処なく溢れてくる。
合わせていた上半身を起こした先生の顔は、何かに耐えるような険しい表情をしていたけど、とてもとても、色っぽかった。秘所が脈打つのを感じる。すると先生の眉間の皺がさらに増えた。
「せん、せぇ……」
その皺を解いてあげたくて、私は手を伸ばす。だが顔に届く前にその手を掴まれ、シーツに縫い止められる。見上げると淡い藍色の瞳が深い海の色に輝いていた。
「、覚悟して。今夜は寝かさない」
にべもなく先生は身体を覆い被せてきて、そして腰の律動を開始した。
「っんあッ! あぁっ! あん! アぁッ!」
思いの丈を叩きつけるように激しく身体を前後に揺らす。中を掻き乱す楔の圧倒的な質量もさることながら、太腿に当たる先生の熱い身体の重みがその存在感をより強く感じ取る事が出来る。その事はさらに私の背を押すように追い立てた。
急激に高まる快感に、脳裏の色彩は高みに昇り次々に真っ白な光色に変化するのを感じる。
「ダメッ……! 私、すぐに……ッ!」
「いいですよ、イッてしまいなさい」
さらに速くなる腰の動きに耐え切れず、私は背中を弓反って久方振りの白の世界に意識を飛ばした。
「ん……ぁ……」
なかなか止まぬ痙攣を先生は静かに見守ってくれた。
私はたゆたう波間に身を委ねてるような心地良さを感じながら余韻に浸っていた。波が引くようにその余韻も引いていくのだが、まだ中に居座るその存在感がゆるゆると動き続けているので、私は嬌声を止められない。
その間、顔や髪、首筋と、キスを降らせ続ける。
「……ッやぁ……あ……」
「いや?」
「だ……って……止まらないの……気持ちいいのが、止ま、ら……ない……」
まるで何時間も愛し合った後のようにそこは濡れそぼっていて、出し入れを繰り返すたびに溢れるのが分かる。
先生は私の肩から胸元、脇腹を通って腰に手を滑らせていく。その感触にぞくぞくと粟立つ。
「止めなくていい」
腰は依然、緩慢な動きを続ける。
「感じて。私の温度を。貴女を苦しめた死者の私はもういない。貴女の中にいるのは温度を持つ生きた私だ」
「……うん……うん……! い、る……!先生が……いる……!」
私はしがみ付くように先生に手を回した。
私の持っていた不安を微塵も残さず吹き飛ばしてくれる確かな存在を全身で感じ取る。溢れる幸福感に心が叫んだ気がした。
何をかは分からない。
だけど声にならない歓喜の悲鳴が全身を駆け巡ったのだ。
それに呼応するように正直に身体も歓びに打ち震える。ゆっくりだったリズムは段々と速度を増し、私の意識も蕩けはじめた。最奥を突いた時に突き上げるような動きを見せる先生の腰は淫らそのもので、最早口をついて出る喘ぎを止める事など出来なかった。
腰を激しく打ち付けるたびに卑猥な水音が響き、前は恥ずかしくて堪らなかったその音が、今は私の劣情をさらに煽りたてる。
「ひあっ! あッ! あぁッ! あん! せ、先生ぇ……ッ!」
「……、……ッ!」
意識をさらう大きく白い波を怖がるように先生にしがみ付きながら小さくかぶりを振る。そんな私の頭を大きな手で支えてくれるのを感じ、ぽつりと、全てを委ねてしまおうと安堵に近い気持ちに包まれた。この波を起こしているのは他でもないアバン先生自身だというのに。
「あ……ッ! も、もう……!」
「、愛してる……!」
暗転していく意識で出来たのは、それに答える事ではなく、ただ腹の上の熱い迸りを感じる事だけだった。
+++++++++++++++
顔に射す日の出の陽光が私を目覚めさせる。
ふと感じた違和感に瞼を全開に開けた。
腕枕。
厚い胸板。
アバン先生の寝顔。
驚愕に一瞬息が止まりそうだったが、なんとか飲み込む。
ああ、そうだった。
帰って来たんだ。
昨夜の事が頭に過ぎると私は薄く笑い、苦笑し、そして頬をヒクつかせた。
宣告通り、夜が白むまで愛された。
喉が掠れるほど喘がされ、火傷するほど熱を注がれた。
冗談とは思わなかったが、まさか本気だったとは……。
全身を襲う脱力感と倦怠感に頭を上げているのもだるくなってきた。私は少し浮かせていた頭を再びその太い腕に預ける。
重くないかな、大丈夫かな。
そんな杞憂もどこ吹く風、先生は眉一つ動かさずに睡眠を貪っている。
私はあまりないこの機会にまじまじと観察するように見つめてみた。
無防備な寝顔を見ていると、年齢よりも若く感じる。昨夜――と言ってもこの上なく今朝に近いのだが――に見せた荒々しく情熱的な先生とは別人のようだった。そのギャップに夢を見ていたのではないかと思うほどだが、腰の周りにまとわりつくような重い怠さが現実だった何よりの証だ。
どことなくスッキリした顔付きで何の憂いもなく眠り続ける先生を見ていると、なにか面白くない。私はこんなに身体が重いというのに。しかもお肌が心なしかツヤツヤしてない?
そんな事を考えてるうちに先生が目を覚ました。
「うー……ん、おはよう、」
「お、おおおおおはようございます」
私のどもりなんて気にもせず、もぞもぞと肌を寄せてくる。
「ああ……だ……」
私の身体を抱きしめながら感嘆の声を漏らす先生につい笑ってしまう。
「変なアバン先生」
「今、幸せが腕の中にあるって実感してるところなんですよ」
「ふふ、くすぐったい」
幼子のように顔を摺り寄せてくる先生が愛らしくて、ふわふわの空色の髪ごと抱きしめる。私の腕の中にも幸せを感じ取れて、小さく弾けるような笑いが止まらない。
その笑いが段々収まってくると、先生は上半身を起こし、片腕で頭を支えて私を見下ろした。
「ねぇ、」
空いた手で私の髪を梳く。
「私はね、ここ数日で色んな人に怒られたんです。その憤りの元を、私は理解しているようでしていなかった。……いえ、全く分かっていなかった。だから貴女が何故あんなに泣いたのかも最初は分からなかったし、そのもどかしさについ声も荒げてしまった……。ごめんね、」
急に真面目に話しはじめた事に驚きながらも、一音一音、ゆっくり、しっかりと紡いでいく先生の言葉に、私はただ聞き入っていた。
「それに自分の今までの生き方を顧みる機会にもなりました。私は自分が思っているよりもずっと人との間に強い絆を作っていたし、温かく慕ってもらえていたんだと、自惚れながらも分かりました。それに皆の為に、特に貴女の為に良かれと思ってこの生命、惜しくないと差し出した事も、それはとても無責任で自分勝手で、えげつない愛の表現の仕方だったんだと気付いたんです」
「先生……、先生!」
いくら本人からでも先生の事を蔑むような物言いに黙って聞いている気にはなれなかった。私は慌ててそれを制する。
「そんな事言わないで! ――私も、分かってたの。私が先生に生きていて欲しかったと願うように、先生も何とかして私を生かしたいと思ってくれたのよね?そんな正に命がけの想いを感謝こそすれ一方的に責め立てて…………。ごめんなさい。それに……ありがとう。先生のおかげで、私はこうして生きてる」
「いいえ、私の方こそ……」
「ううん、私が……」
同じような事を昨日もしていた事に気付き、私達は再び見合った。そしてまた吹き出す。
「ふふ、キリがないですね、私達」
「ホント、学ばないなぁ」
私達はベッドに大の字になって寝転んで、大きく笑い声を弾けさせた。
しばらく部屋には笑い声が木霊していた。
「あははっあはっ…………っはぁ、……あぁ、そろそろ起きて行かないとね……」
「まだ大丈夫ですよ」
「だってもうみんな集まり始めてる頃だし、それに……ホラ、こんな時間に二人でいるっていうのも……」
「大丈夫ですって」
「でも」
「ずっと休み無しでしたからね、レオナ姫と今日は休息日にしようという話になりまして。そろそろこちらにも伝達されてるんじゃないんですか?ですから、もう少し休んでて大丈夫ですよ。あ、それに飛翔呪文で見てもらいたい場所があるので、明日から貴女には陸上班の方に来てもらうことになってます。私が迎えに行く手筈になっていますので、こちらの陣営にいても何も不自然な事ないですよ。ちょっと気が急いて一晩早く来すぎちゃいましたがね。ま、そんな訳で、一緒にいても人の目を気にする事はありません」
「……相変わらず抜かりが無いというか、何というか……」
呆れを超えて感心してしまう。
「まぁ門衛がまさか毎日いるとは思えませんでしたが、用心を兼ねたのと正攻法では辿り着けないと考え、夜中にベランダからお邪魔したというのもあるんですが……」
ブツブツと私に言うでもなく顎に手を当て、聞こえるか聞こえないかの声量で呟いている。
「は?」
「ああ、いえ、こちらの話」
そして先生は私の身体を優しく包むように腕の中へ寄せると、髪に顔を埋めた。
「だから今しばらく、このままで……」
くすりと小さく、笑いとも溜息とも言えない息を吐き、私は心地好い肌の感触を感じながら目を瞑ることにした。
この目を次に開ける時も、きっと世界は鮮やかに色づいてる。
赤が、青が、緑が、生命の色が温度を得て咲き誇る眩しい世界に。
そう思えるから、私はこうして再び深く瞼を閉じられる。
あの冷たく仄暗い世界はもう見ない。
私を抱くこの温もりが側にある限り。
(2006.10.13)
な、長かった・・・ココまで・・・。
肝心のリクのエチ部分がエライ割愛されてるし語りばかり・・・;
お待たせした上こんな出来で申し訳ありませぬ〜!!
でもこの話はいつかトライしたかったので、考えるいい機会を頂けました。
ありがとうございます、ぎる様! 受け取ってくだされば嬉しいです〜!