Shooting Bird 2

 夜は更け、薄暗い林にはふくろうの声と静かな風のさざめきが聞こえる。
 ぽつんと建てられたその山小屋は、時々猟師や旅人に使われていて建物の痛みも少なく、体を休めるには十分過ぎる程の場所であった。
 今はアバンとが今日のキャンプに使用していた。

「アバン先生、やっぱり悪いわ」
 山小屋にはベッドが設置してあったが一つだけだったのだ。もちろん一つだけでも、置いてあるだけでありがたいことではある。
 アバンはそのベッドをに譲り、自分は床に寝ようとすでに腰を落ち着けていた。
「私、床で構わないんですから、先生がベッドを使ってください」
 本当に申し訳なさそうにはその案を提案してくる。
 は甘える事を知らない。
 少し意固地な位に自分に甘えさせる事を許さない。自分に尽くしてくれる事に嬉しいと思うよりも先に申し訳なく思っている節がある。一度その事でアバンは「遠慮しなくていいんですよ?」と言った事があるが、照れくさそうに「両親にも親に遠慮するなって言われたことあります」と言いアバンを苦笑させた。
 それからはやや強引にを甘えさせることにした。こうして有無を言わせず床を陣取って剣の手入れでも始めてしまえば、も仕方なく受け入れるだろうとアバンは踏んだのだ。
「いいんですよ、は女の子で私は男なんですから。女の子が床で寝る事はありません」
 いつもの優しさだと気付いたは、でも……と言いそうなのを押し留めてそれ以上頑なに遠慮する事はなかった。そして気を緩めたのかふと、呟いた。
「男……か……」

 何気なく呟いた言葉だが、アバンの隠し潜めていた欲望を震わせるには十分の言葉だった。

「ええ……男、です……」


「つっ」
 動揺が手の動きを鈍らせ、アバンは手入れする剣に指を切ってしまった。 はベッドから飛び降りアバンに駆け寄る。
「先生、大丈夫!?」
「あはは、大丈夫ですよ。少し切っただけですから。大げさな声を出してしまって申し訳ありません」
 アバンはがそれで安心するかと思ったのだが、はその手をジッと見つめ、ゆっくりと自分の手に取った。
「っ……?」
「……さっきのお返しね?」
 声の出ぬ間にアバンの人差し指はの小さな口の中に吸い込まれていった。
「っく」
 思わず声が漏れてしまう。
 傷の痛みは快感へと変わる。

 くちゅ

 体の跳ねが抑えられない。
 動きはしなくても指先に舌が絡み付く。ザラリとした感触と温かく濡れた口中を触れるというのはなんて淫靡で艶かしいんだろう。

 この柔らかさを知ってしまったら……
 もう……

 限界だよな……


 ちゅぷ、との唇から指を抜き取る。
 先生? と声をかけようと思い顔を上げた時には、既に目の前にアバンがいた。
「せん……ん!」

 アバンは唇を重ねた。

 まるで離せば溺れて息が出来なくなるというぐらい、噛み付くように荒々しいキスはの息をあげさせていた。
「……ふ……んん…………ん……!」

 キ……ス……?
 クラクラする頭にそれだけが思い浮かべることが出来た。

 唇の隙間からの吐息が漏れる。
 それを合図に舌が進入しの小さな舌はいとも容易く絡めとられる。器用に動くアバンの舌は歯列をなぞり、熱にうなされても正確に愛撫を施していく。
「んふ……ん……ふぁ……ん!」
 待ち望んでいた状況のはずなのに何かおかしい。息をつかせぬ口付けがの思考を奪っていく。すると痛いくらい抱きしめていた腕に力がこもり、あっという間に体を抱きかかえられベッドへ投げるように押し倒される。
「あっ!」
 ギシリとなるベッド。
 は顔を上げるとアバンの瞳と視線がぶつかる。
 男の目だ。
 いつもの優しい色など微塵もない、熱情に浮かされたオスの目だ。

 コワイ……!

 本能的に感じ取った身の危険を回避しようと体は動く。
「やっ……! アバ……んん!」
 名を呼ばせない。

 の両手を片手で頭上に押さえ込み、さらに深く深く口付ける。逃げるの舌を追い詰め、逃げ道をふさぐ。
 身をよじり逃げ出そうとするが、密着した体でそれをすれば余計アバンの欲望を掻きたててしまう事には気付かない。口の端からは下しきれなかった唾液がつ、と零れ落ちる。思うように酸素を取り込めないクラクラする頭で、 は自由になってるアバンの片腕の動きにまで意識がおよばなかった。気付いた時には視界の端に着けていた筈のスカートが取り去られ床に落ちていた。
「ふぁ! はぁっ、はぁっ……、っえ……?」
 やっと唇を離され空気を取り込めただが、気付いた時にはアバンは上着に手をかけ、そして躊躇なく引き千切った。
 露わになったのは白く張りのある肌。桃色の頂きが固く自身を主張する二つのふくらみ。誰にも見せたことのない穢れのない肌を……。

先生が……見てる……!

「い、いやあああああ!!」
 逃げなくては!
 危険はすぐそこまで押し迫っているんだと、この時やっと気が付いた。
「やめて先生! いやっ! やぁっ……!!」
 の懇願は耳に入らない。ただ目の前のまろやかなふくらみが身をよじるたびにふるふると震えるのに魅入ってしまう。ごくりと喉が鳴る。誘われるかのようにその桃色の頂きを口に含む。
「ひっ!」
 今までに感じた事のない感覚に身が竦む。
 舌の上で転がしたり強く吸い上げるとの体は電気が走ったかのようにビクリと跳ねる。空いた右手はもう片方の乳房に伸びる。手の平でふくらみを揉み、指で硬くとがった乳首に刺激を与える。
「いやあ! ……やめ、て!せん……っせぇ!」
 涙が止まらない。
 圧倒的な力と立場の差が恐怖としてにのしかかる。
 こわいどうしていやだやめて
 それだけが繰り返しの頭に浮かぶ。

 怒涛に押し寄せる快感の波に耐えるのが精一杯で、これから何が起きるのか考える事も出来なかった。乳房にあった右手は気付いた時には下着にまで伸びていた。薄い茂みを通り越し、しっとりと蜜を蓄えた蜜壷につぷ、と指が滑り込む。
「ゃあん!」
 暖かい蜜をアバンの指は絡めとり、それを助けに奥へと挿し入れる。
「あっ! っやあん! ひあっ! ああん!」
 女の声にゾクリと体が震え、アバンは無意識に舌舐めずりする。
 熱いソコはアバンの指を締め付け逃すまいと絡みつくようだ。この狭さで自分が入った時の事を考えると背中に電気が走る。
 早く早く……
 性急に指を増やし、さらに卑猥な水音と喘ぎ声があがる。
「やぁ! あぁっ! せん……せぇ……! んあ! やめ……てぇっ!」
 の涙ながらの頼みも耳には入らない。甘い声で自分を呼ぶという都合にいいところだけを聞き取り、興奮を高める。

 もうガマンできない。
 ガチャガチャと耳に障る金属音を鳴らしながらベルトのバックルを外し、そそり立つ自身を取り出す。痛いほど張りつめた怒張は暴発する機会を窺っている。

 初めて見た勃起した男自身。
 驚愕と恐怖では息を呑む。

 そして本気で逃げなくてはいけない事を今更ながら気付く。
「い、いやあああ!! せんせぇ! やめて! お願い! いやあぁ!!」
 は力いっぱい押し返すが所詮敵うわけがない。足の間に体を割り込み入り口にあてがう。熱いモノがあたるのがわかるが、抗う事も敵わずそして一気に貫かれる。
「ひっ!!」
 指とは比べ物にならない圧倒的な質量が凶器となっての狭いソコを埋め尽くす。
「いやあああああ!!」
 熱い杭を打ち込まれたような激痛が走る。破瓜の痛みがの体と心を打ちのめす。接合部からは処女を失った証が愛液とともに滴る。

 たまらない。
 熱くて蕩けそうなの中はひくひくと蠢き、奥へ奥へと誘い込むようだ。
 入れただけで射精感は最高に高まる。
 腰を動かさずにはいられない。

「……やぁ! い、痛いッ……! 抜い……てぇっ!」
 胸を力無げに叩くのでさえ愛しく、アバンは首筋や鎖骨、肩に唇を寄せ強く吸い付き紅い花をいくつも散らしていく。腰のグラインドはなお強める。白い胸が目の前で上下し、誘われるように尖った桃色の部分を口に含む。
「いやぁ! ヤ、ダ! せんっ……っせぇ! やめ……てぇ!」
 打ち付けるリズムでの声は途切れ、アバンを制止する事は出来ずむしろより興奮させてしまう。アバンはの腰をしっかりと掴み自らの腰へ引き寄せ、根元まで挿し入れる。
「ひあん!」
 思わずのけぞり白くて細いあごが露わになる。
 アバンはその喘ぎのひとつも愛しげに喰い尽くさんと、の口を貪った。無理矢理ながら口内を這いまわる舌はひどく熱っぽい。暴力的に下腹部を犯されているというのに、冷たく叩きつける腰とはまるで別人のように、この口付けは優しくて深い。
 どちらが本当のアバンなのか、痛みと快感の境が、にはわからなくなってくる。
 出る声は嗚咽ではなく喘ぎ声へ。





++++++++++++++





「いやぁ〜ラッキーだったよなー」
 ポップは足早に暗い林を進む。
 普通に行ったら朝までかかってしまう道程になるはずだったが、途中、町へ向かう荷馬車に乗せてもらえた為に大幅に時間を短縮することが出来たのだ。
「それにしても腹減ったなぁ」
 かの少女は頼んだらきっと何か作ってくれるだろう。
 しょうがないなぁ、なんて言いながら花のような笑顔とともに……。

…………


……はっ!
「な、何を考えてんだオレは! べ、別になんとも思ってねーよ! あんな人を買出しに行かせるような女っ!」
 真っ暗な林の中、真っ赤なポップの独り言が響く。

 予定していたキャンプ地の山小屋が目に入る。
 明かりもついているし二人はきっとあそこだろう。夜中の林を進んでいた不安さもあり、早く人の居る場所に落ち着きたかったポップは山小屋に向かい駆け出した。
 着いたもののもしかしたら他の人が使っているかもしれない可能性はある。ポップは二人が確かにこの山小屋にいるか、簡素なためカーテンのない窓から覗いてみた。だが目に飛び込んできたのは……

「っな……!!」

 先生と……
 な、何してるんだよ……

 ベッドの上で泣いて抵抗するを組み伏せるアバン。

 信じがたい光景に驚きを隠せない。年頃であるポップは男女の秘め事がどんなことかは分かっていた。だけど想い描いていたのはもっと嬉しくて気持ち良いいもの。これはセックスじゃない。……一方的な……レイプだ。
 泣いてるはきっと助けを求めてる。
 でも自分に出来たのは、驚愕で震える体を抱きながらその場から逃げ出す事しかなかった。尊敬する師と信頼する仲間が、男と女としてそこにいる。それを理解する事も否定する事も幼い今のポップには出来なかった。

 怖い

 ただそれしか考えられず、ポップは行く先もなく今来たばかりの真っ暗な林の中へ逃げ込んだ。





 部屋には肉のぶつかり合う音と粘着質な水音、荒い息づかいだけが聞こえてくる。
 は深くなる結合に最早逃げ出す事は出来ない。
 出来ないのではない。意志がない。もう抵抗する事も喘ぐ事もなくボンヤリと焦点も合わず中空を見つめ、ただ自分の身に起きてる事をやり過ごすだけだった。まるで目の前の出来事から目を瞑るように、虚ろな瞳は開かれていても何も映しこまない。

 の様子など眼中にない。絶頂が近いアバンはただ己が欲望を満たさんが為、貪る様にかき抱いた。ガンガンと腰を打ちつけ、登りつめるための糸を手繰り寄せる。は糸の切れた操り人形のようにダラリと力なく、その高速のグラインドに体がグラグラと揺れるだけだった。濡れそぼったソコは感じている為ではなく自分の体を傷つけない為の保護として分泌していたのだろう。この時間が早く過ぎるようにと……。

 頭から爪先まで電気が走るようだ。
 強い快感の波がそこまでやって来る。
「……っく……っイク……!!」

 !  !!

「……っくう!!」
 熱い想いと己の白濁した液体が溢れ出す。

「……っはあ! っはあ! っはあ!」
 一気に襲う達成感と虚脱感。
 自身を今まで蹂躙していたのソコからズルリと抜き取り、荒い呼吸を落ち着けようと体を起こすと、の虚ろな瞳と合った。


 ざぁっと、体を伝っていた汗が気持ち悪いものに変わる。
 全身を虫が這っている様な不快感。
 今までの快感など吹き飛び、ポツリと頭に一つの疑問が浮かぶ。



 私は 何を した …… ?








 ぱしゃ  ぱしゃ

 近くに流れるその川は深いところでも腰ほどで流れも穏やかな為、はそこに身を沈め、体の汚れを落としていた。真夜中で水の温度はヒヤリとしたが今は温度など感じていなかった。たた汚れを落とさなくては、という一心だけだった。だがその動きは力無いもので、腕や肩などにただ水をかける程度の沐浴だ。表情はなく、いまだに目は虚ろだ。
 一通り沐浴を終わらせ川からあがり、先ほど巻いて来た薄手の毛布で水気を拭くために体に羽織る。
 つ……、と。
 内股に伝うものを感じる。
 手に取ってみると透明と白濁、それに血の混ざった液体が指に絡む。

 何もわからないようにしていたけれど。
 今までのは、夢じゃなかった。

 私 先生に 犯された

 恐怖と悲しさと悔しさがじわじわと溢れてくる。
「……っく……ふ……!」
 いつか好きな人になら自分をあげてもいいと思ってた。好きなアバン先生になら……。
 でもそれを先生じゃない先生に奪われた。
 力ずくで!
「ううっ……ふぅっ……! う、あああー!」

 怖かった痛かった悲しかった!
 体中から悲鳴をあげる。
 破裂しそうな体を両手で押さえつけながら真っ暗な林の真ん中でむせび泣く。



 ポップは木の陰からそんなを見つめる。
……」
 知らず知らずのうちに自分にも涙が流れてくる。
 自分は駆け寄って慰める事もアバン先生に問いただす事も出来ない。見て見ぬふりしか出来ない情けない子供の自分が悔しかった。

「いやああああぁぁ!!」

 漆黒の片隅に羽根をもぎ取られた小鳥の悲痛な声が木霊する。
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(2006.1.12)
初・裏。
聖人君子じゃない先生を書きたかったんです。