魔の森
「それじゃあ、私はこの先をもう少し見てくるわ」
「うん、気を付けて。」
片手を上げて答えるだけのは、直ぐにうっそうとした森の中にその姿を溶け込ませた。
もうすぐ日が暮れるが、そのだいぶ前からこの森は日暮れより深い暗さに包まれている。そんなこの先の森へ一人歩きをさせるのは心配だったが、姉弟子の旅慣れと落ち着きは信頼するに値するものであったし、それにこうして夕飯の準備の間に周囲の見回りと、万分の一の確立で居るかもしれない自分たちのように火を熾す人間を見つけるのは必要な事だと教えられた。”遭難者”のダイたちには、少しでもその希望にすがらないといけなかったのだ。
さて、自分はが帰る前に夕飯を準備しないといけない。だがダイは、の背中が見えなくなってもしばらく立ち尽くしていた。
ダイの頭によぎるのは、あの朝の事だった。
一瞬、誰だか本気で分からなかった。
髪は短く切られていたし、血で汚れた服も着替えていたというのもあるが、なにより雰囲気は一日前のものとはまるで違っていたのだ。あの柔らかな笑みを湛える朗らかさはどこにも無い。それは悲しい事だが想像が出来ていた。ただ今のは違う。本当は、あれだけのショックを受けていたのを見れば、もう少し肩を落として見るからに痛々しいやつれた表情を見せるのかと思っていたのだ。だが、浜で旅立ちの準備をしているダイの所へやってきたは、唇を真一文字に結び凛然とした表情を浮かべ、力強い足取りで砂浜を踏みしめて来た。
呆然とした顔のダイの横まで来ると、当然のように荷物を小舟に積み込んだ。
「……」
ダイは掛ける言葉が見つからなかった。
「……勇者になるんでしょう?」
は荷物を載せながらダイを見た。見上げた瞳に、ダイは一瞬見惚れてしまった。
はレオナのような華やかで人目を引く綺麗さではないのに何故だろう。もちろん、見た目を見比べられるほどダイも女の子を見た事があるわけではない。だが感じるこの魅力は? ダイ本人はまだ気付かないが、これは”少女”ではなく”女性”の顔だった。一日でこんなに変貌できる女の凄まじさを、ダイは目の当たりにした。
「私も手伝うわ。一日も早く勇者になって、魔王軍を打ち破りましょう」
そう言っては手を差し出した。ダイは弾かれたように自分の手を差し出し、握手を交わした。
だが笑顔を交わす事はもう、してくれなかった。
「そういえば、の職業は? 戦士……でもないか、動ける魔法使い?」
「魔闘家よ」
「まとうか?」
「アバン先生が名付けてくださったわ。先生は私に色んなものを授けてくれた。私はそれを全て持って、歩いていくわ」
ダイはが自分からアバンの名を出した事に驚いた。もっと名を出すのも憚られるほど傷付いていると思ったからだ。いや、傷付いているのは違いなかった。ただ触れれば壊れてしまうような危うさはもう見られなかった。そうであってもおかしくないはずなのに、は振り切ったんだ。一晩で。先生の言葉を、守るために。
「先生の事、……愛していたんだね」
は目を丸くした。
まさかこんな年下の男の子がそんな事を口にするなんて。だがダイも自分自身に驚いている。「愛」などという言葉を口にしたのは初めての事だった。けれどを表す言葉はこれしか当てはまらず、つい口を衝いて出てしまった。
なかなか口を開いてくれないに、まずい事を言ってしまったかとバツを悪そうに俯きそうになった時だった。
「ええ、そうよ。愛しているわ」
表情の色を変えず、だがはっきりと告げた。
ダイは男女の愛などまだよく分からなかったが、それはとても強くて、とても苦しいものなんだと、幼心に刻み付いた。
「おら。手伝え、ダイ」
ポップの呼びかけにようやく意識を戻した。
慌てて振り返り、枯れ木を程よい長さに折っているポップを手伝う事にした。
「ったく、お前の地図とも呼べない地図を信じるんじゃなかったぜ。もうこんな状態が二日も続いてんだぞ!? 旅のはじめが迷子なんて聞いた事ねぇよ!」
「だってキメラに乗った時はこう見えたんだもん」
そう言って稚拙な地図らしきものに目を落とす。
「永遠に続く森なんてない。いつかは途切れるんだから地図どおり真っ直ぐ北西へ向かおうって、も言ってくれたじゃないか」
「その北西が、この生い茂った森の中じゃちっとも分からねぇじゃねーか! 昼間でもお天道様が見えないなんて、何を目印に進めばいいんだよ!」
「そうなんだよなー」
「そうなんだよなー、……じゃねーよ!」
小枝でダイの頭を叩く。
「あーあ。早くまともなメシと柔らかいベッドが欲しいなー。アバン先生といた時だって赤貧だったけど、メシが焼きキノコと非常食なんて事なかったぞ。このままじゃこの干し肉みたいに干上がっちまう」
「……ねぇ、ポップ」
「あん?」
ポップは手元の折れるか折れないかという枝と戦っている最中で、声だけを寄越す。
「先生が死んでから、は笑わなくなったね」
その言葉にポップは手元と表情を固めた。
ずっとポップの胸中は穏やかではなかったのだ。敬愛するアバンの死は何にも代え難い悲痛なもので、もちろん本心から悼んでいた。だがそこに逃げていたのも事実だった。アバンとが恋仲。それを見たくもないのに目の前に突きつけられた。胸を抉るような痛みを覚えさせる、その事実を。
知っていて、ずっと見ないフリをしていた。
あの、山小屋の出来事を。
あの日、ただならぬ関係を持った事を意図せずして知ってしまった。アバンの事はもちろん尊敬していたし、には淡い恋心を持っていた。その二人が自分のいないところで深い関係にあるなど、考えたくもなかった。その衝撃の大きさから、見間違いだ。何かの間違いだ。そう自分に言い聞かせて、ポップはいつの日か記憶の深淵に追いやるように沈めていった。だがそれを本人達に掘り返された。最も傷付く言葉で。「愛してる」だって? じゃあ、あの時泣いて抵抗していたのは何だったんだ。そんな状態から「愛してる」なんて言えるまで、どこで愛を深めていったというんだ。自分の見ていない、一体どこで? 聞きたい事は山ほどあるが聞けようもない。自分などが触れる事も出来ないような高みに、既にその思い出たちはの中で綺麗に仕舞ってあるのだから。
「知らねぇよ! 勝手に塞ぎこんでればいいだろ!? 先生、先生っていつまでも追い駆けて老けていきゃいいよ! 人の気持ちも知らないままバーサンになるまでむっつりしかめっ面してろっつーの!!」
急に喚きたてたポップにダイは冷静だ。
「……ポップ、のこと好きだったんだ?」
「う、うるせーーーッ!!」
耳までトマトのように赤くしたポップは、手元の枝をへし折りながら叫ぶ。
「だ、誰があんな口うるさくてお堅いヤツ……! お、おれは別に、別になぁ、あんなヤツ何とも……! あ、あんな……!」
「こういうの、素直じゃないって言うんだろ?」
「それ以上言うとこの枝、口に突っ込むぞ!!」
「物騒な事を言うのはこの口?」
背後から聞こえてきた少女の声にギクリとする前に、ポップの頬は横に限界まで伸ばされた。
「いっ、いひひひひ!」
「ポップ、あなた本当に口が悪いんだから」
限界だったはずなのにさらに伸ばす。
「いへぇ! はらへはらへ!」
「あ、あの。話、聞こえてた……?」
口の開けないポップに代わって、ダイは恐る恐る探りを入れてみた。きっとポップには、今に聞かれたい話ではなかったはずだ。そんなダイの優しさに涙ながらに少しばかり感謝した。
「聞こえないわよ。何だか大きな声で喚いてるばかりで。……なーに? 私の悪口でも言ってたの?」
ポップは一瞬頬の痛みを忘れるほど安堵した。こんな事、知られるわけにはいかないのだ。どうにかの手を振り払って、後ろを振り向く。
「あーほうらよ! ひかくひめんろろうふおんららっへらぁ!」
「何言ってるかわかんない」
頬をこねくり回し、強張った筋肉を無理矢理ほぐさせる。
「あーそうだよ! 四角四面の豆腐女だって、色は白いが水臭ぇって言ってたんだよ!」
「水臭い?」
話を逸らしたようで逸らせなかった自分の口を呪った。普段ならもっと上手く回るはずなのに。これ以上ボロを出すわけにはいかないポップは、目を逸らして口を変な形に結んだ。何だかこれからずっとこんな役回りのような気がしてならないダイが、仕方なく乗りかかった船でフォローを入れてやる。
「そ、そういえば、森はどうだった!? 帰ってくるの早かったね!」
「ああ、うん。――何だかよく分からないけど、良い風に言ってないのは分かったわ。ポップ、覚えてらっしゃい」
は分かりやすく眉を吊り上げて、ポップにひと睨み寄こすと、ダイの方に顔を向けた。
「――あの先は崖でずっと回り道しないといけないみたい。明日は左方に進みましょう。今日は思ったより暗くなるのが早くてね、そこで切りあげてきたわ。そっちの収穫はないけど、ホラこっちなら」
そう言って指し示した地面には、よく育ったキノコがいくつか転がっていた。
幾らか腹の足しになった夕飯を済ませ、ダイたち三人は先ほどの喧騒も忘れて休息をとっていた。今はポップが焚き火の番をしている。
正体の分からない燻りを胸のうちに感じながら、小さく爆ぜる焚き火の明かりの向こうに、こちらに背を向けて丸まるを見る。見ているのは分からないはずなのに、まじまじと直視出来ない。目の端でちらちらと窺うだけで落ち着かない。
そうしてやっと見た背中は、あの日からやけに小さくなったように感じた。昼間は精一杯胸を張ってるが、こうして休むと身を抱え込むように丸くなる事に、ポップは昨日気付いた。何故、がそうなってしまったのか。すぐに思い当たる原因を思うと、ポップの胸は痛んだ。その痛みはとても刺々しく、黒かった。未知の色を持つその気持ちから目を背けようと必死にかぶりを振った。
ポップは夜が少し、怖くなった。
遭難して三日も経ってしまった。
木々の隙間から見えるほんの少しの太陽を頼りに進んでいるが、まるで迷路のような森の内部と、どうやら方向感覚を狂わす磁場にあるのも災いして、今日も三人は彷徨っていた。もしかしたら永遠に抜け出せないのかもしれない。旅立ちのはじめにしてはひどく意気消沈になってしまうほど、三人の顔に疲れが見えはじめた。何の変化もないまま、また太陽は真上を過ぎ(たらしく)、地平に沈もうとしている(らしい)。
そんな時だった。
この数日で何度か邂逅した、モンスターの鳴き声。それが聞こえてきたのだ。しかもこの声は獲物を威嚇している獰猛さを感じ取れた。ダイたちは目を見合わせ、その声の主を急ぎ探す。嫌な予感がするのだ。
案の定、二体のモンスターが小さな女の子を追い詰めているではないか。弾かれたようにダイが駆け出した。
「だああッ!!」
リカントに飛び蹴りを食らわしたダイは、そのままじんめんじゅに向かってナイフを抜く。素早く枝を全て切り落としてやれば、敵わないとみたのか、じんめんじゅは森の奥に逃げていってしまった。すると、ダイの蹴りから身を起こしたリカントはその目に怒りを宿らせて、鋭い爪をダイへと向けて駆け出す。思いのほか速かった動きに、ダイが振り向いた時にはもう側にまでその距離を縮めている。まずい。そう思うよりも早く、なんとリカントは炎に包まれた。驚くダイと女の子が見れば、崩れ落ちたリカントの後ろからポップが得意気に顔を覗かせた。
「お嬢ちゃん、大丈夫?」
その脇からが女の子に駆け寄って、腕を差し出した。女の子は安堵で緊張の糸が切れたのか、その腕の中に飛び込んで泣き出してしまった。
「え〜ん! え〜ん! 怖かったよ〜!」
「よしよし、怖かったわね。でももう大丈夫よ。怪我はない?」
頭を撫でてやると、涙で潤んだ目で見上げてきた。
「うん、大丈夫……。ねぇ、お姉ちゃんたち。あたし道に迷っちゃったの……村まで送ってくれない?」
「え? ええ、と……」
は後ろのダイたちと目を合わせる。モンスターから助けてもう大丈夫だと言ったものの、全然大丈夫じゃない事に漸く気付いた。その気まずさを三人から感じとって女の子はまたも不安に駆られてしまう。
「実はお兄ちゃんたちも迷子なんだ!」
あっけらかんと笑い出すダイに脱力してしまったが、その不安は治まらずまた泣き出してしまった。は女の子を抱き締めてあやしてやるが、頼りない自分たちに不安を隠せないんだろう。当然の反応に申し訳なく思いながら背中をさすってやる。
その背中が小さく揺れた。
「どうしたの?」
そう女の子に聞いたところでの鼻先に嫌な匂いが掠めた。生き物が焼ける前、その獣毛を焼いた匂いだ。
「一体どうすんだよ! この大陸についてからもう三日近くも森をぐるぐる回ってるんだぞ!」
ダイを責め立てているポップの声の後ろから匂ってくる。嫌な予感に振り向いた時には遅かった。全身を焦げ付かせながらも、更なる怒りで目を血走らせたリカントがその凶暴な腕を振りかぶっていた。
「しまっ……!」
微動だにする暇もなく、リカントはダイたちに向かってその腕を振り下ろす。に出来たのは腕の中の女の子をさらに抱え込むだけだった。
だが女の子を庇って受けるであろう背中の痛みは訪れず、感じたのは炎の熱であった。
「な、何だあれ! すげぇ武器だ!」
ポップの言う方向を振り返って見てみれば、木の枝に毅然と乗っている人影が見えた。
ギラリと輝く銃身と、弾と思われるものを抜き取るのを見ても驚いた。あれは鉄砲だ。この世界には無いと思っていた武器なのに。は目を瞠ってその人物の挙動を見守った。
「詰めが甘いね、魔法使いクン」
「何ィ?」
枝から降りたその人物の言葉に、ポップはすぐに頭に血を上らせた。正体も分からないというのに、文句をつけんと真っ直ぐに向かって行く。
「てめぇ! おれの魔法にイチャモン付けようってのか!?」
小突くように指を差し出すと、思わぬ柔らかさがポップの指先を包んだ。今まで触った事のない柔らかさに、指先を思わず凝視した。
「何すんのよっ!!」
小気味のいい音をさせてポップの顔面をはたくと、その人物は顔を覆うゴーグルを上げる。三人は目を見開いた。
「このスケベ!!」
「お、女ぁ!?」
ポップの驚きはダイとも同じだった。
「マァムお姉ちゃん!」
「ミーナ!」
先ほどの女の子がマァムという少女に飛びついた。はそれを見て安堵する。良かった、知り合いだったんだ。
「あのお兄ちゃんたちが助けてくれたんだよ!」
ミーナはようやく笑顔を見せて、ダイたちを指した。
「そうだったの、ありがとう。私はマァム。この森の東にあるネイル村の者よ」
「おれはダイ! こっちはポップに、」
ポップは腕を組んでまだ憤っていたが、は小さく会釈をする。
「キミ、女の子なのに強いんだね」
「フフッ。このくらいの装備をしておかないと、魔の森の近くじゃ暮らせないのよ」
「魔の森?」
「そう。魔王が復活して以来、モンスターたちがこの森に住み着いてしまったの。元々迷路のような森だからこの国の人たちは魔の森と呼んでいるわ。あなたたち、どこへ行くつもりだったの?」
「ロモスの王宮だよ」
「ロモスの王宮ならこの森を抜けたところにあるけど……今日はもう暗くなるし、私達の村に泊まっていったら? ミーナを助けてくれたお礼もしたいわ」
マァムはそう言ってミーナの頭を撫でた。ミーナは恥ずかしそうに俯く。
「本当に!? そりゃありがた……うわぁ!」
「きゃあ!」
ダイの言葉を遮って、ポップはダイとチカを引っ掴み、少し離れた所まで引き摺った。ポップの急な行動にマァムは訝しむ。
ポップは手を口元に当て、小さいながらも語気を荒げて二人の耳元へ向けた。
「おい! こんな女放っておいてさっさと行こうぜ!」
「え? 何でよ?」
「そうだよ、せっかくお礼してくれるって言うのに」
「ばーか! 王宮とチンケな村のもてなしじゃ比べ物になんねーだろ!」
「ちょ……聞こえるぞ」
「聞こえてるわよ」
「ッうわあ!!」
「……ご推察のとおり、私達の村はチンケな村よ。王宮のもてなしとじゃ全っ然! 勝負になりません!」
語気もさることながら既に隠しきれない怒りはその表情にも表れている。ダイとは本能的に宥めなくてはと思うほどのものが、目の前で燻っている。
「いや、そ、そんなことないって……」
「そ、そうよ! コイツが失礼なだけだから……」
ダイとチカのフォローにも耳を貸さず、マァムも流石に腕を組んで機嫌を損ねてしまった。
「いいわよ、さっさと行ったら? 夜になるとここらのモンスターも凶暴になるから、早く森を抜けた方がいいわよ! そこのツメの甘い魔法使いクンじゃ、食い殺されちゃうかもしれないしね!」
「何だとッ!? ……フン! こんな森の中にある小せぇ村に用なんかあっか! おれらはさっさと先に進ませてもらうぜ! 行こうぜ、ダイ! !!」
ポップは喚きながら二人に振り返る。
「私は行かないわよ」
「何ィ?」
こんなに気分の悪い場所からは足早に去りたかったポップは、水を差すの言葉で眉根をさらにひそめた。大股で進もうとした足を止め、の方へ向き直す。といえば、進む意志はないと言いたげに腕を組んで、厳しい表情をポップへ向けた。
「せっかくの助けを一時の感情で受け取らず、これからまた夜の森に入って行くだなんて自殺行為だわ! 賢明とは言えない。冒険者はいかなる時も危険だと認知したら回避する最善の方法をとるようにって、先せ……」
「っるせー!!」
それ以上先は聞きたくなかった。黒い感情が視界の両端から侵食してくるようで、それを振り払うかのように一度目を瞑り、我鳴り声を森に響かせる。何もかも面白くない。ポップは喚いた勢いのまま口を動かす。
「んな教科書通りに動いてられっか! こんな森ぐらいなぁ、習った事がなくてもちょちょいっと抜けてやるから見てろ! 王都で合流だ、いいな!? 行くぞッ! ダイ!!」
「ええっ!? やっぱりおれも!?」
「あったりまえだ!!」
「え〜……〜ご飯〜」
可哀想に、ダイは有無を言わさずポップに引き摺られて行ってしまった。
「何なの、アレ……」
マァムも呆れ顔だ。溜め息を一つ吐いた。
「ごめんなさい、悪い子じゃないんだけど……」
「いいのよ、あなたが謝る事じゃないわ。でも本当にいいの?」
「ええ、言っても聞かないし。ちょっと心配だけど、まぁダイも一緒だし一晩ぐらい持ちこたえるでしょ。じゃあ私一人だけど、お世話になってもいいかしら?」
「私たちは構わないわ。では行きましょう。もう日も落ちるし、ミーナのおばさんの為に途中で毒消し草を採っていかないと」
そう言ってマァムはミーナの手を取り、歩きはじめた。